この9月のパリは本当に良いお天気続き。ここに暮らして11年になるが、その中でもとりわけ過ごしやすく美しい9月だったように思う。

 そんな風だから、あちらこちらの屋外イベントも大盛況。先週末には、普段は一般公開されない歴史的建造物や公の機関が見学できるという全国区の毎年恒例の催しがあり、この週末には、「fête des jardins(フェット・デ・ジャルダン=公園祭り)」と題するイベントが行われた。

モンマルトルの丘にはワイン畑が存在する!

 大統領官邸が公開された先週末の企画に比べると、「公園祭り」の知名度は低いが、このところの好天は公園巡りにはうってつけ。郊外を含めて約100カ所の公園が参加するというパリ市主導のお祭りを、私も初めて覗いてみることにした。

 かなりしっかりと作られたカラフルなパンフレットには、おなじみの公園に混じって、普段は入ることのできない場所もマークされている。その中でも特に、かねて気になっていた「モンマルトルのブドウ畑」に興味を覚えた。

モンマルトルの丘の上にあるブドウ畑

 実はパリにも恐らくここ1カ所だけ、ワインのためのブドウ畑がある。それは人気の観光スポット、モンマルトルの丘の上に、それこそ猫の額ほどのスペースだけれども、確かに存在する。

 丘には、どこからアクセスしたとしても必ず急坂を上る必要がある。私は丘の北側から「柳通り」という道をとった。行程にはいくつかの階段もあり、なかなかの勾配。しばらく行くと、左手にかつてのキャバレー「ラパン・アジル」の絵ハガキのような建物が見え、さらに上っていくと、その背後に黄金色した丘の景色が広がってくる。

 そう。それこそがすっかり色づいたブドウ畑。ワイン産地の大抵がそうであるように、なるほど、ブドウは丘の斜面を利用して植えられており、パリ市街を遠望しつつ、さんさんと降り注ぐ日差しを受けている。

 交差する通りの名は「サンヴァンサン通り」。お酒の神様の名前を冠した通りだ。フランス映画好きの方ならきっとご覧になった『アメリ』の出だしには、一瞬だけれども、この通りが出てくる。

 さて、特別公開とあって、すでにブドウの木の合間には、人々の頭がのぞいている。私もその人垣に連なって中へと入る。ブドウの木々は子供の身の丈ほどの高さに調えられ、きれいに畝(うね)を成している。