政権交代が実現し、民主党の舵取りがスタートしました。高速道路原則無料化や子ども手当などの政権公約、何より予算、そして脱官僚依存などの行方がまず大方の国民の注目でしょう。一方、地味ながら、国のありようを決める意味から今後注目したいのが、外国人の入国管理(入管)政策です。

ハリソン・フォード主演「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」(The Weinstein Company提供)

 そんなことを考えたのも、先日、不法滞在を巡る1本の米映画を見たからです。公開中の「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」(ウェイン・クラマー監督、脚本)という作品。

 ムスリムで不法滞在のパキスタン人一家、家族とともに移住し、米市民権取得を控える韓国人高校生、女手ひとつ、幼い息子のために危険を冒して国境を越え、不法就労するメキシコ人女性、ハリウッドデビューを夢見て、観光ビザで入国後、労働許可を得るため入国管理課の移民判定官と関係を持つオーストラリア人女性・・・。

ハリソン・フォードがメジャースタジオ以外で初の出演

 ロサンゼルスを舞台に、それぞれの事情を抱え、国境、国籍、在留資格を巡って泣き、怒り、嘆く人々。そんな不法滞在者を摘発する「移民・関税執行局(Immigration and Customs Enforcement=I.C.E.)」の特別捜査官にして、不法滞在者らの境遇に同情的で苦悩する主人公の姿を描いています。

「正義のゆくえ」(同提供)

 主人公は、あのハリソン・フォード。脚本に賛同し、長いキャリアの中で初めてメジャースタジオ以外の作品への出演を快諾したという宣伝文句も納得できるほど、移民国家であるアメリカの光と影をまざまざと見せつける作品でした。

 その公開を記念したシンポジウムを覗いてみました。

 国際移住機関(IOM)プログラムマネジャーの橋本直子氏、移民・難民問題を扱う渡邉彰悟弁護士らが出席し、世界の移民問題、特に現在1100万人の不法滞在者がいるとされる米国で2001年の9.11以来、主にテロリスト対策から監視と摘発が強化されている実状が報告されました。