民主党の歴史的大勝に終わった衆院選から3週間余り。民主党の鳩山由紀夫代表を首相とする社民党、国民新党との連立政権は、国会のねじれを解消し、圧倒的な民意を背に華々しく始動したかに見える。だが、日本経済に欠けていた「政治の安定」が果たして実現したと言い切れるだろうか。

新政権16日に発足、主な入閣内定者の顔ぶれ

「政治の安定」実現するのか?〔AFPBB News

 今回の総選挙が自民党に罰を与えるためのものにすぎなかったことは、マスコミ各社が行った投票行動の分析結果に如実に示されている。

 例えば、朝日新聞が2009年8月31日~9月1日に実施した緊急の全国世論調査によると、政権交代が起きて「よかった」という意見は69%、「よくなかった」は10%と大きな差がついたが、民主党の308議席獲得に対しては、「よかった」が54%、「よくなかった」は25%と、好意的な受け止め方が減っている。

 民主党大勝の要因(複数回答)については、「政権交代願望が大きな理由か」という問いに81%が「そう思う」と答え、「政策への支持が大きな理由か」との問いには「そう思う」が38%にとどまった。一方、野党となる自民党に対しては「立ち直ってほしい」が76%を占め、「そうは思わない」は17%しかない。

 民主党の具体的な政策に関してはどうか。「子ども手当」への賛成は31%で、反対は49%。「高速道路無料化」への賛成は20%で、反対は65%に上る。この傾向は公示直前の調査結果と大して変わっていないという。あれほど喧伝されたマニフェスト(政権公約)も、こと投票行動においては、ほとんど参考にされなかったと言える。

 要するに民主党は、有権者の不満の「ガス抜き」に成功しただけで、必ずしも政策への信任を勝ち得たわけではない。

 選挙で吹いた強烈な追い風は、ちょっとした弾みで容易に向きを変える。今回吹いた風を民主党に対する信頼の証しと捉えているのなら、それはまさに大いなる幻影というものだ。

 民主党のマニフェストに盛り込まれた政策には首をかしげたくなるものが少なくない。政権担当能力を厳しく吟味されるのはこれからだ。内閣発足初年度の実績を問う2010年7月の参院選が終わるまでは、「一寸先は闇」という永田町の格言を忘れずにいたい。