G20を盛んに持ち上げ、実を取った米国の外交戦術
2008年10月のワシントンG7では急遽、G20の財務相もホワイトハウスに招集され、政権末期のブッシュ大統領がG20を盛んに持ち上げた。
その目的は何だったのか。米国債を中国に引き受けさせて米国製品の輸出市場を確保するほか、親米政権国家の経済的崩壊で安全保障上の不安が生じたため、米国企業の利権危機を防ぐことにあったのではないか。もちろん副次的には、自国発の経済危機により発言権が低下し、欧州、とりわけフランスやドイツの大陸国にG7の主導権を握られる事態も避けたかったはずだ。
一方、中国を中心としたBRICsと欧州大陸国はこれを好機ととらえ、ドル基軸体制を切り札に米国が借金を重ねるレジームにメスを入れ、世界経済の主導権を奪おうとした。「G20でプレトンウッズ体制の見直し」とまで騒がれたのは、こうした思惑があったからであろう。
しかし、2008年11月のサンパウロでのG20財務相・中央銀行総裁会議ではそのような方向性は示されず、むしろ基軸通貨としてのドルを追認する結果になった。
つまり、政治的にG20を持ち上げることで米国が実を取った。ワシントンで大して中身の無いG20サミットを開催し、それがG7に取って代わったように演出したわけだ。
半面、それまでG8のメンバーとして持ち上げられていたロシアは、プーチンの強硬路線に資源型経済モデルの破綻と東欧各国の経済危機が加わり、米国にとって存在価値が急速に低下した。G20ではロシアが中国に主役の座を奪われ、すっかり存在感が薄くなってしまったのも、米国の狡猾な外交戦術だろう。
次いでサミット議長となった英国も、自国の不人気政権テコ入れにG20を利用した。「世界をリードする英国」を国内向けに演出しようと、財務相・中銀総裁会議をサミット前の準備会合に仕立て上げる。冒頭では常にブラウン首相が演説をぶち、テレビに中継させる。おかげで2009年は3月、9月、11月と3回も財務相・中央銀行総裁会議が英国で開かれるようである。
各国がエゴ丸出し、品性欠いた国際会議に・・・
こうした各国の思惑を背景に、G20は政治的に演出されてきた。だから、実のある話にならなくても当然かもしれない。
2009年9月のG20財務相・中央銀行総裁会議が出したコミュニケは、以下のように要約できる。(1)世界経済の状態は底を打ったが、まだ回復力は弱い。自国の状態が良いからと言って、各種の危機対応を勝手に止めないこと(2)保護主義を台頭させないこと(3)IMF(国際通貨基金)を通じて新興国の発言権を若干拡大すること(4)銀行のレバレッジ能力を低下させるため、自己資本規制を強化して給料は下げさせること――。
