官民サラリーマンへの夏のボーナス支給が一巡した後の時期にあたる7月頃から、消費の動きがガタッと悪くなった。そうした声を、しばしば耳にする。現時点で公表されている経済統計によって、そうした見方の裏付けを取ることは難しい。だが、折からの天候不順による悪影響も相まって、7月分の消費関連統計に悪い数字が並んできているのは事実である。

◆7月の景気ウォッチャー調査 景気の現状判断DI(方向性) 家計動向関連 小売関連40.2(前月比▲3.9ポイント。7カ月ぶり悪化)

 業態別の内訳を見ると、「商店街・一般小売店」「百貨店」「スーパー」「コンビニエンスストア」「衣料品専門店」「家電量販店」「乗用車・自動車備品販売店」「その他小売店」すべてで、DIは前月比で低下した。エコポイント効果を受けている「家電量販店」、エコカー減税などの恩恵を受けている「乗用車・自動車備品販売店」についても、7月にDIが悪化していたことが、筆者には印象的だった。前者は55.0(前月比▲7.5ポイント)、後者は52.4(同▲4.4ポイント)である。「家電量販店」については、ウォッチャーが寄せたコメントの内容から、天候不順の影響でエアコンや扇風機などの販売が芳しくないことが影響したものと容易に推測できるが、「乗用車・自動車備品販売店」のDI悪化については、理由が不明確である。

◆7月の全国百貨店売上高 前年同月比▲11.7%(17カ月連続減)

 筆者が個人消費の強弱を推し量るためのインジケーターの1つにしている、全国百貨店売上高の内訳である「婦人服・洋品」売上高は、7月分が前年同月比▲15.6%。これで25カ月連続の前年割れになった。バーゲン開始日を前倒したことで、6月には同▲9.8%と、前年同月比マイナス幅を10%未満に抑え込むことに成功していた。だが、7月はその反動が出たことに加え、天候不順が長引いたことで季節物の販売が伸び悩み、マイナス幅は再び拡大した。夏のボーナスが大幅に減少する中で、少なくない既婚家庭で「財務大臣」役を担っていると考えられる女性顧客層、あるいは働いている単身の女性顧客層が、自らのための支出についても、緊縮財政を引き続き徹底していることがうかがえる。

 また、その他の筆者が注目している品目の7月分売上高は、「惣菜」が前年同月比▲7.9%で、14カ月連続のマイナス。「化粧品」は前年同月比▲5.4%で、8カ月連続のマイナス。ただし、今年3月に記録した同▲8.8%をボトムに、マイナス幅はやや縮小してきている。

 上記のような7月分消費統計の悪化のうちどこまでが天候不順や地震などの一時的要因によるもので、どこまでが基調的な悪化なのかは、まだ判然としない。「個人消費は7月頃に腰折れ」説も、その適否を確認するにはさらなるデータの蓄積が必要である。だがここで間違いなく言えるのは、消費者を取り巻く雇用・賃金環境が極めて悪く、冬のボーナスを含め、先行きに明るい展望が開けてこないため、「聖域」のない支出絞り込みを消費者が続けようとしている、ということである。

 経済政策面での期待感も、盛り上がりに欠ける。衆院選で優勢が伝えられている民主党がマニフェストで打ち出した子ども手当や高速道路無料化といった施策についても、最新の世論調査結果を見ると、有権者の評価は意外に低い(8月18日付 朝日新聞朝刊)。

 景気の本格的な回復がまったく見えてこず、デフレ圧力の強まりと一層の拡がりが意識される状況下、長期金利がさらに低下余地を模索していくのは実に自然な流れだと、筆者は考えている。10年債利回りの1%前後への低下を、引き続き展望している。