筆者が「平家の逆襲」と形容している景気楽観論の再燃と内外株価の堅調推移に、息切れ感が漂っている。

 生産関連を中心とする景気指標のベクトルが内外で上向きになることが、そうした楽観論に当面のエネルギーをかなり供給するのではないかと、筆者はみていた。ところが実際の株式市場の動きを見ると、生産指標の改善という「循環」面の話が買い材料視されるのではなく、米個人消費の低迷長期化という「構造」面の話が売り材料視されることになっている。

 8月13日以降に米国の株式市場が材料にしたのは、米7月の小売売上高が3カ月ぶりに減少したことや、米8月のミシガン大学消費者センチメント指数速報が2カ月連続で低下したことであって、米7月の鉱工業生産が9カ月ぶりに増加したことや、米8月のニューヨーク連銀製造業景況指数が1年ぶりにプラス圏に浮上したことではなかった。

 東京市場では、17日に発表された4-6月期の四半期別GDP速報(QE)で実質GDPが5四半期ぶりにプラス成長になったことが、ほとんど材料にならなかった。株式市場ではそうしたイベントはすでに織り込み済みであり、むしろ市場予想対比上振れしなかったことが失望感につながって、売りが持ち込まれたという。さらに、上海株式市場で総合株価指数が過去9カ月で最大となる5.8%の急落になったことが、中国の景気回復への期待感を削ぎ、世界の株式市場全体のセンチメントを冷やすことになった。17日の米株式市場で、ニューヨークダウ工業株30種平均は前週末比▲186.06ドルの大幅安を記録し、7月29日以来の水準に下げた。

 市場がどこまで材料にしているかは分からないが、財務省が発表している貿易統計を見ると、前年同旬比(ないし前年同月比)はこのところマイナス幅を拡大しており、輸出がここにきて加速しているわけではないことが示唆されている。中国の貿易統計でも、7月分の輸出の前年同月比マイナス幅は、6月から拡大していた。

 日本経済が依存しなければならない輸出には、米国経済が構造不況に陥っている上に、中国の人為的な経済成長の限界が見えつつある中で、加速感がない。4-6月期のプラス成長への転換実現に寄与した政府の景気刺激策の効果には、時限性がある。さらに、個人消費については、人口減・少子高齢化という人口動態ゆえに「地盤沈下」がもともと続いている上に、雇用・賃金に関する調整圧力にはかなり強いものがある(今回のQEでは雇用者報酬の減少がきつかった。「高揚感皆無の実質プラス成長」参照)。したがって政策効果が一巡した後の消費下振れリスクは大きい。