東京には海がある。
こんな言われてみるまでもなく当たり前のことさえ、誰かが言いださなければ気がつかなかったりするのが不動産ビジネスにおける立地創造の現実です。
品川区港南エリアは人口が36.4%増
今や東京湾岸の新しいブランド立地の1つとなった品川区港南エリアがまさにそうでした。「東京にある海」に気づいたことで大きく発展することになったのです。今回はここ港南エリアについて考察してみましょう。
一時期、東京都心の人口減少が大きな社会問題になっていたことがありました。
港南エリアが属する港区全体の人口動態を見て見ると、昭和の後期から減少傾向に変わり、1995(平成7)年には、15万人を割り込むまでに至りましたが、その後増加に転じ、2004(平成16)年には17万人台、2006(平成18)年には18万人台と年々増加の一途をたどっています。
そして、2006(平成18)年から2007(平成19)年の人口の増減率を見てみると、東京都全体では0.8%増となっている中で、この品川区港南エリアは36.4%増という、極めて高い人口上昇率を記録。隣接する港区海岸エリアの6.1%増と比べても、突出した人口増であることが分かります。
この間、港南エリアのいわゆる最寄駅である品川駅の1日当たりの乗客数が14.6%増となっていることからも、人口増は数字のマジックではない現実であることが明らかです。
地価は20%以上も高騰、それでも人は集まる
しかも、2007(平成19)年1月時点で港南3丁目の公示地価は前年比22.2%増、周辺エリアもいずれも20%増と、地価は高騰しているにもかかわらず、人が流入し、人口が増加していることは驚くばかりです。
品川駅の東側、港南エリアは、汚水処理場や食肉市場などが隣接し、港南エリアは、その目の前を通って、品川駅から20分以上も歩かなければたどり着けない、いわば陸の孤島だったのです。
公団のタワー住宅こそ建っていたものの、目の前には東京都のゴミ処理施設の焼却用煙突が立ち上がり、後ろには食肉工場と、おせじにも高級住宅地とは言い難いエリアでした。
この港南エリアの可能性にいち早く目をつけたのが、鹿島建設でした。2004(平成16)年8月に、港南4丁目に竣工した『東京シーサウスブランファーレ』は、総戸数373戸の超高層タワーマンションとして、圧倒的な人気を集め、早期完売を果たしたのです。
東京の海に気づいた時、そこは高級住宅地に生まれ変わった
その秘密は、東京の海を強烈にアピールする広告キャンペーン戦略でした。
特に、レインボーブリッジと東京湾越しに立ち上がるマンションのビジュアルは、海と物件を巧みに関連づけることに成功しました。
東京都心に住みながら、日常的に海を感じ取れるという今までにない “シティリゾート” 的な価値は、まさにマンション広告のコロンブスの卵だったのです。