「婚活成就祈願」をうたう神社は独身カップルで賑わっているし、お見合いパーティーやシングルズバー、マッチングサイトなどの結婚仲介サービスの市場規模は約600億円に拡大中。業界の統計によると約4000社が結婚紹介ビジネスを手がけており、登録者数は延べで62万人に上るという。ワタベウェディングやツヴァイなど関連企業は増収増益で笑いが止まらないし、ケーキにアクセサリーと便乗商法も目白押しだ。
民間企業ばかりではなく、地方自治体も婚活支援に前向きだ。過疎化や嫁不足に悩む農村部ではすでに約半数の自治体が結婚支援対策を行っているが、最近は都市部でも独身の男女を水族館やレストランに案内するイベントなど、自治体が後押しするセミナーや交流会が目立ち始めている。
厚生労働省の統計を見ると3年連続で上昇したとはいえ、日本女性の2008年の合計特殊出生率は1.37。このまま少子化が続けば、日本の人口は2055年までに3割減少すると予測される。
人口が増えなければ税収が減って自治体の財政は立ち行かなくなってしまう。結婚する人が増えれば子供も生まれて家族が増えるから少子化に歯止めをかけることができると期待をかけているのだ。
背景に将来への不安。でも最後に頼れるのは自分
結婚に向かってGO!(資料写真)〔AFPBB News〕
結婚する人の数はかつて、景気が悪化すると減っていたというが、いまは2005年を底に微増傾向に向かっている。不況の長期化で収入が減り、この先も安定的に仕事があるのかどうか分からない。
構造改革の進展で、世の中は優勝劣敗の弱肉強食の方向に向かっていて、勝ち組と負け組の格差は広がるばかりだ。男女とも職を持ち、定収入のある相手と結婚したいというのが本音だろう。高収入でなくても、共働きなら助け合うことができるし、独り身より生活コストを抑えることができる。
容姿も、性格も、収入もよく、配偶者への思いやりを忘れない理想の結婚相手など、そうはいません。〔AFPBB News〕
なかでもKONKATSUシートの応募状況を見るまでもなく若い女性ほど経済的安定を求める傾向が強い。彼女らは結婚仲介業者のメンバーに登録してイベントに積極的に参加しているし、ヘアメイクやダイエットなど外見磨きに精を出しているようだ。
しかし、ほとんどの既婚者が知っていることだが、容姿も性格も良く、高収入で配偶者へのサービスを忘れない理想の結婚相手にめぐり逢う確率はかなり低い。前述した結婚紹介業に登録している人のうち、結婚までこぎつけた人は全体の8%に過ぎないし、新規参入組の中には高額の会費を集めて個人情報を横流しする悪質な業者もある。
カラダ磨きよりも、コミュニケーション力をアップさせよう!(資料写真)〔AFPBB News〕
婚活は決して悪いことではないが、個人は不安定な時代を乗り切るために最後に頼れるのは自分の力だけだということをもっと知るべきだろう。仕事のスキルを培い、他者とのコミュニケーション力をアップした方が、結局は婚活の近道になるのではないか。
婚活ブームの背後にあるのは、先行きへの漠とした不安だ。国も自治体もまた、「婚活」という一見明るく前向きな言葉のイメージに頼るばかりではなく、結婚率の低下や少子化を招いた原因を取り除くことに力を注ぐべきだろう。