1 はじめに

 今般の東日本大震災は、マグニチュード9.0、10メートルを超える大津波、福島第一原発事故と想定外の事態が生起する未曾有の大災害であった。亡くなられた方々のご冥福と早急な地域復興を心からお祈り申し上げる。

 ところで災害発生以来、連日各種のメディアを通じて大震災に関わる情報が報道されているが、その中で4月4日の読売新聞の記事に目を引かれた(1)。

 記事の趣旨は、今から約40年前、岩手県普代村の当時の村長が、周囲の反対を押し切って建設した15メートルの防潮堤が、今般の大震災による大津波から村民の命と財産を守ったというものである。

 当時、使用頻度と費用対効果の視点だけで考えていれば、防潮堤の高さは当時の相場である10メートルで建設され、村人の生命と財産は守れなかったであろう。しかし、仮に大津波がなければ無用の長物と批判され、その存在価値が認められることもなかったのではないだろうか。

 「モノ」には、平和・平穏な時代が続くことを前提に費用対効果やコストダウンを考えていいものと、国民に致命的影響を及ぼすような最悪な事態に機能を果たせば、それで十分効果があると考えるべきものの2種類があるように思われる。

 一般的に、軍事用装備品も防潮堤と同様に後者に属するものであろう。にもかかわらず昨今の自衛隊の装備品取得に関する議論では、後に述べるようにライフサイクルコスト(以下LCCと略記)に注目した「コスト低減」に大きなウエイトが置かれている。

 確かに軍事用装備品は平素から使われる生活用品と比べて使用頻度が低い割には高価である。だからといって、国家の危機的事態・最悪事態に用いられる軍事用装備品を生活用品と同じようなコスト論で評価していいものだろうか。