目指すは医療強国

6歳の娘に窃盗命じた母親逮捕、韓国

ウォン安も海外からのメディカルツアーの呼び水に〔AFPBB News〕

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 背景には海外からの需要増がある。日米欧の先進国に比べて中国、ロシア、ブラジルなどBRICs諸国やベトナム、中近東などの新興国では最新の医療設備が十分に整っていない。また先進国でも高い医療費や患者が治療を受けるまでの長い待ち時間などが問題視されている。

 韓国は設備が整った医療施設が多く、医師の水準は低くない。コストもほかの国で治療を受けるより安い。ウォン安も追い風になって飛行機代や宿泊費を差し引いても安上がりだ。

 かくして椎間板ヘルニアやガンなどに悩む富裕層が海を越えて続々とやって来る。韓国の医療機関の調べでは2007年に韓国で治療を受けた外国人は約8000人だったが、2008年には2万7000人に急増。今年は5万人に膨らむ見通しだ。

 こうした海外からの需要に応えていけば医療強国として飛躍する絶好の機会になる。韓国政府はこのほど官民合同で韓国国際医療サービス協議会(Council For Korea Medicine Overseas Promotion、CKMP)を立ち上げた。38の医療機関と韓国保険産業振興院(Korea Health Industry Development Institute、KHIDI)や韓国観光公社などの政府機関が参加。スクラムを組んで外国人客の誘致を積極化している。

韓国を「美容整形ツアー」のメッカに、政府がバックアップ

ソウルの美容整形クリニックで目の手術を受ける女性(資料写真 原稿中のクリニック等とは無関係です)〔AFPBB News

 国は海外のマスコミや旅行代理店を対象にしたプロモーション活動のほか、各国政府や医療機関に働きかけて外国人患者の誘致に乗り出し、来年には大規模なアジアグローバルヘルスケア会議を開催する予定だ。

 またそれぞれの医療機関では、医療用語に精通した通訳の養成や、外国人入院患者向けの病院食レシピの開発、外国語版ガイドブックの作成も始めている。

 今年5月には法律を改正して外国人患者を誘致する医療機関や誘致業者は保健福祉家族部に登録したうえで、事業報告を毎年KHIDIに提出させ、実績もチェックするようになった。

 韓国で治療を受ける人を対象に滞在期間を保証する「メディカルビザ」の発行や、治療法などをめぐって発生が予想される医療紛争を解決するための第三者による仲裁制度の導入も準備されている。KHIDIは治療後のアフターケアのために米国、中国、シンガポールに海外事務所を設置した。

根強い反対意見も

 「患者はどうしても医療設備が整った総合病院へ行きたがるので、韓国でも中小規模のところほど病院経営は苦しい。外国人枠の分だけ総合病院の受け皿を減らせば、中小の医療機関にも患者が回るのではないか」と韓国政府関係者。

 外国人を受け入れる医療機関には国から補助金が出ており、受け入れる側の経営にも寄与する。目標は2013年に20万人の外国人客誘致だ。

 一方で、官民挙げての外国人客誘致には「韓国人の患者が必要な治療を受けにくくなる。本末転倒ではないか」という批判も多い。

 韓国政府は今年1月に外国人向けのベッド数を全体の5%以内に留めるというルールを決めて沈静化に必死だが、反対意見はいまだに根強い。治療を受けて帰国した患者のアフターケアをどうするのかという課題もあるし、言葉や文化の違う国での治療に二の足を踏む外国人も多いだろう。

 診療報酬の引き下げや医師不足で揺れている日本の医療業界をよそに隣国が着手した医療観光。その行方を見守りたい。