週明け27日朝方、日経平均株価はこれまでバブル崩壊後の最安値であった7607.88円(2003年4月28日終値。ザラ場では同日の7603.76円)を下回り、一時7400円台となった。前週末23日夜に、急速な円高の進行を嫌気して大証日経平均先物が一時7100円まで下げる場面もあっただけに、違和感はまったくない。
もっとも、24日の米国株が前日比マイナス幅をある程度縮めて引けたこと、ドル/円相場が直近円高ピークの90.87円から一時94円台まで円安ドル高方向に戻したことから、日経平均は一方向に下落する動きにはならず、いったん反発している。
市場安定化に向けた「政策総動員」的なパッケージを政府が打ち出す方針であることが報じられており、政策期待も株価下支えに寄与しているものと推測される。
27日午前に記者会見した中川財務・金融担当相は、前週末に急進行した為替相場の急激な円高について、「過度の変動が見られる」「為替の無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与える」「重大な関心を持って引き続き注視していきたい」とコメント。
すでに為替介入を行っているかどうかへの言及は避けつつ、必要な場合に円売り介入で対応する姿勢であることを強く示唆した。株価の急落については、「非常に急速な下落」であり「大変懸念している」と述べた。
11時半から首相官邸で与党政策責任者を交えた協議を行った後で、麻生首相から金融市場の緊急安定化策について指示が出される見通し。安定化策には、週末に報じられたように、金融機能強化法の公的資金枠を2兆円から10兆円に拡大するほか、時価会計の部分的な見直しや有価証券の保有区分の変更、銀行の自己資本比率規制の見直し、日銀や銀行等保有株式取得機構による株式買い取りなどが含まれるものと見込まれる(10月27日付 日経新聞)。
しかし、危機がグローバルに深刻な問題になっており、一国だけの政策措置で抜本的にマーケットが安定するという筋合いの話では、もはやなくなっているのが実情であろう。
筆者がこれまで何度か述べてきたことだが、市場はもはや「言葉」や「行動」だけではなく、具体的な行動によって政策効果が実際に出てきていることの確認、すなわち「実効性の確認」までを求めており、「即効薬」は見当たらないのが実情である。27日午前は株価が反発しているが、底を打ったとは言い難い。
個別国の政策対応は、迷走気味のように見える。
為替防衛(為替介入の側面支援)のために24日、0.5%追加利上げに動いたデンマークのような国もあれば、景気・金融市場安定化を狙って0.75%緊急利下げに27日踏み切った韓国のような国もある。
その韓国は、外貨準備を使ったウォン買いドル売り介入で為替防衛を図ってきたが、市場の激流の前に目立った成果が挙がっていない。今回の利下げは金利水準の面からはウォン安要因になるので、マクロ経済政策の組み合わせとしては非常に苦しいものがある。そうした点は、オーストラリアも同様である。
オーストラリア準備銀行(RBA)は10月7日に、景気悪化をにらんで1%の大幅利下げを行った。ところが27日には、「豪ドルの流動性を確保するため」、前週末24日に豪ドル買い介入を行ったことを確認している。
日本はどうか。財務省が円売り介入実施で臨戦態勢に入っていると見られる中で、注目されるのは、日銀の対応である。今般の大幅な株安および円高で、日銀の景気シナリオが一段と下方修正されるのは必至の情勢である。
しかも、日銀が利下げに動くリスクシナリオとして筆者が指摘してきた、財務省による円売り介入実施が、現実味を帯びている。景気後退が深まるリスクも増大しており、日銀が市場から利下げに追い込まれる可能性が、ここにきて増大していることは間違いあるまい。
白川総裁と山口副総裁の日銀プロパーコンビを軸にした日銀執行部は、福井前総裁が築いた金利0.5%の「貯金」の取り崩しを行うかどうか、ぎりぎりの判断を迫られることになりそうである。