住宅業界はリフォームブームである。景気低迷の影響で日本の住宅着工件数は2009年に100万戸を割り込み、現在は80万戸前後の水準まで落ち込んでいる(国土交通省調べ)。だが、リフォーム業者には仕事が次から次へと舞い込み、てんてこまいの状況らしい。
井形慶子さんは著書『よみがえれ! 老朽家屋』(新潮社)の中で、リフォーム急増の背景に「中流がやせ細り、貧困層が増えている」ことがあると見る。
厚生労働省の調査(2007年)によれば、日本の相対貧困率は15.7%。井形さんは、<6人に1人が年収114万円以下、つまり、月収にすると、10万円に満たず、どんなに働いても普通の暮らしに手が届かないのだ>と記す。
また、本書に登場するマンション仲介業者の営業マンは、<今時、5000万円以上の物件を購入できる体力のある人は少ない>と語る。
日本で本当に「貧困層」が増えているのかについては議論の余地がある。だが、国民の間に先行きの見えない不安が蔓延していることは間違いない。「もったいない」「贅沢すべきではない」という節約意識の高まりとともに、「今ある家に手を入れて長く住み続けよう」「中古住宅を安く購入してリフォームしよう」と考える人が増えている。
「350万円」で実現した一軒家のリフォーム
ただし、満足のいくリフォームを実現するのはなかなか難しい。中古住宅を手に入れたらボロボロの欠陥住宅だった、予想外の費用がかかってしまった、というトラブルや失敗談は後を絶たない。
これからリフォームを検討する人にとって、本書はそうしたトラブルを未然に防ぐ格好の教科書となることだろう。
築35年の老朽マンションをリフォームで甦らせた井形さんが、再び大がかりなリフォームに挑んだ(参考記事「若者はいつまで家賃を搾取され続けるのか」)。今度は中古一戸建てである。
井形さんは、吉祥寺で「終の住処(ついのすみか)」を手に入れ、長年の夢であった「おうちショップ」をつくろうと決意する。いくつもの物件を当たり、最終的に見つけたのは、商店街に近い15坪の敷地に建つ築31年の建売住宅だった。