政治家は「若者を生かす街づくり」を掲げるよりも、「お年寄りが安心して暮らせる街づくり」を掲げた方が当選しやすい。だから若者ではなくお年寄りを大切にする──。
かつてJBpressの著者インタビューでこう語っていたのは、『若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?』の著者、森川友義さんである(記事はこちら)。
井形慶子さんの新著『老朽マンションの奇跡』を読むと、なるほど確かに日本の政治家は若者のことなど眼中にないらしい。住宅行政においても、若者は相当割を食っているようだ。
『老朽マンションの奇跡』(新潮社、1500円、税別)井形さんはこう記す。
<日本の住宅システムの欠陥は、就職し、結婚して家庭を持ち、子育てを開始する人を標準的社会人とみなし、そこを手厚く支援しようとした点にある。つまり、会社に所属しない人や、結婚しない人は住むことに相当な代価が付きまとう。>
<若者は安い公団にすら入居できず、さりとて、高い家賃も払えない。よって、たとえパートナーが見つかっても、狭い部屋で肩を寄せ合うか、通勤に時間を取られる遠方に住むしかない。>
その結果、貯金もおぼつかない20代の青年が東京で家を買うためには、結婚してダブルインカムになるか、親の援助を受けるしか方法はない、ということになる。都心で若者が家を買うなんて、現実的には「夢のまた夢」という状況が出来上がっている。
若者は社会の弱者である
『老朽マンションの奇跡』には、ハヤト君という20代の若者が登場する。井形さんが経営する出版社の優秀な若手社員である。
ハヤト君は家賃7万9000円を払って荻窪のワンルームマンションに住んでいたのだが、生活に窮するようになり、都心から1時間かかる八王子の安いアパートに引っ越すことにした。ところが、都心のデパートに勤務する彼女に「一緒に住もう」と話を切り出したところ、ふられてしまった。彼女にとって「同棲するなら実家に近い都内、最低1LDK」という条件は譲れなかったのだ。
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