「もし若者が事実と真剣に向き合ったら、大暴動が起きるのではないでしょうか。起きない方がおかしいと思いますよ」

 異民族弾圧で世界中の耳目を集めたウルムチばかりか、全国で暴動が頻発している中国の話ではない。日本のことである。そんな物騒なことを言い出したのは、早稲田大学で政治学を教えている森川友義・国際教養学部教授。「だって、この数字を見ただけで自分たちがいかに損をしているか分かるでしょう」

20代は有権者の3分の2が権利を放棄

 森川教授が取り出したのは、今から2年前の参議院選挙での数字だ。

森川友義・早稲田大学国際教養学部教授

 20代:約1500万人に対し、約500万人。
 70代:約1200万人に対し、約900万人。

 20~35歳未満:約2500万人に対し、約1000万人。
 70歳以上:約2000万人に対し、約1300万人。

 これらの数字はその年代の人口と2007年に実際に投票に行った人の数の対比である。20代と70代を比べても、35歳未満と70歳以上の数字を比べても、若者の方が人口は多い。ところが、実際に選挙に行っている人はお年寄りの方がはるかに多いのだ。

 とにかく若者は選挙権を放棄しているとしか言いようがないデータである。20代では3分の2が権利を放棄し、35才未満では実に1500万人が選挙に行かなかった。「これでは政治家が若者のために政治をしようなどという気になるわけがありません」(森川教授)

 究極の季節労働者と呼ばれることがあるように、政治家ほど現金な職業はない。票に結びつく人たちには徹底的にサービスする一方、票につながらない人たちは見向きもしない。日本の政治家にとって、若者のことなど眼中にないのである。

 そんなばかなことがあるのだろうか。天下国家を語り日本を正しい道に導くのが政治家の役割のはず。政治家性善説に立てば全くその通りだろう。

 しかし、政治家の先生たちほど性善説が似つかわしくない人たちもいない。「鍛錬を重ねた絶妙の言い回しで、天下国家を語り日本を正しく導いてるように見せかけて、実際には自分たちの支持者たちに最高のサービスをするのが政治家だ」と森川教授は言う。

 小泉純一郎・元首相による郵政民営化を争点にした突然の解散から4年。その時、国民の大きな支持を得た自由民主党は、その期待の大きさに押しつぶされるような形で、4年後の今、衆議院の解散を決めた。

 小泉元首相による「古い自民党をぶっ壊す」ことに期待した国民を裏切ってしまった自民党は極めて厳しい戦いを余儀なくされている。一方、国民の落胆を受けた民主党には今までにない強い追い風が吹く。それは、日本を変えたいという国民の声が高まっているからだ。今回の選挙戦は4年前に匹敵する盛り上がりを見せるに違いない。

 日本の政治は国民の期待通りに変われるのか。森川教授はとにもかくにも若者の選挙に対する姿勢だと言う。今回の選挙は日本が変わる大きなチャンスととらえ、『若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?』(ディスカヴァー)を緊急出版した森川教授に、日本の政治の行方を聞いた。