「鹿島立ち」という言葉がある。鹿島(現在は茨城県鹿嶋市)と香取(現在は千葉県香取市)の神様が国を平定したことから、武士が旅立つ時に鹿島神宮(茨城県鹿嶋市)を参拝する慣わしができ、旅に出ることや門出そのものを表すようになった。
そのため、海外での訓練に出かける前などに鹿島神宮を参拝する自衛官も多い。海上自衛隊の練習艦「かしま」は同神宮に由来していることから、練習艦隊出港の前にはこの地に赴き、無事を祈願した後に遠洋航海に出ている。
大量に打ち上げられたクジラの謎
その鹿島神宮で、東日本大震災発生の前後に不思議な出来事が起きた。震災1週間前の3月4日のことだった。
「鹿島灘にクジラが打ち上げられた!」
神宮のほど近く、太平洋の荒波が打ち寄せる海岸にたくさんのクジラが打ち上げられている。その数は52頭にも上っていた。近くの住民が駆けつけて必死に海に戻し、30頭は無事だったが、残りの22頭は砂浜に埋葬したという。
鹿島の神は「地震抑え」の神としても信仰されているため「クジラは海の異常を神様に知らせに来たのではないか」と地域の人々は噂しているが、鹿島の神の力を以ってしても大地震は抑えきれなかった。
そして3月11日、震度6弱の揺れが茨城を襲ったのだ。鹿島神宮の被害も甚大だった。石灯篭62基が倒壊し、石の鳥居としては日本一を誇る大鳥居も崩れ落ちてしまった。
しかし、もし、震災2日前の大きなお祭りの時に地震が発生していたら、多くの人が大鳥居の下敷きになっていたかもしれない。それを避けられたのは御神慮によるものだと地元の人々は考えている。
その後、鹿島神宮では、余震の続く中でも地震鎮めの祈願と、被災して亡くなった方やクジラの慰霊祭などを執り行っていた。
そんな折、さらに不思議なことが起きた。