日銀は15~16日に開催した金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を全員一致で決定した。日銀公表文「当面の金融政策運営について」は、景気の現状について、判断を2カ月連続で上方修正した。

 しかし、景気全体の評価を「下げ止まりつつある」という表現で示すにとどめたほか、輸出・生産や公共投資という景気にポジティブな動きよりも前に、「国内民間需要は弱まっている」というネガティブな動きを配置するという、工夫の跡が見られる。

 また、景気の先行きについては、公表文の第3段落に、「先行きのわが国の景気は、内外の在庫調整が進捗したもとで、最終需要の動向に大きく依存する」という文章が追加された。

 在庫調整の進捗という経済の自律的な動きや、その効果に限界がある財政出動の効果を過大に評価するのではなく、最終需要の動向をあくまで冷静に見極めていきたいという、日銀の景気に対する慎重姿勢が凝縮された一文であると言えよう。

 金融環境についても、5月にはなかった「改善の動き」が明記されたものの、「なお厳しい状態が続いている」という結論部分は同じ。日銀が危機対応として行っている様々な企業金融支援措置について、その解除を議論するのは時期尚早という考えをにじませたと解される。

 このように、日銀は今回の公表文で、足元の景気判断は上方修正しつつも、先行きについては慎重姿勢ないし警戒心を、婉曲に表明することになった。中央銀行としての立場や、公式文書という性格から、過度に下振れリスクを強調するような強い表現は用いられなかった感もある。