スローバリゼーションは日本にとって「追い風」

 一方、西側陣営に属する日本にとっては、直接投資を引き込みやすい国際環境になっているという前向きな理解も可能ではあろう。

 昨年以降の動きを踏まえれば、既にグーグル、アマゾン、マイクロソフトそして日本オラクルとクラウドサービス大手が軒並み日本におけるデータセンター増強のために投資を決断したことが報じられている。

 終わらない円安を新常態と仮定した時に、「円安を活かすカード」として対内直接投資促進は有力不可欠な選択肢である。既にその胎動は見られ始めている。

 友好国の中で相互投資が行われるフレンドショアリング(近しい関係にある国に限定したサプライチェーンを構築する動き)は日本への「追い風」と見て間違いないだろう。

 なお、日本の対内直接投資戦略を国・地域・業種別に検討する議論に関しては相応に紙幅を要するため、別の機会に本コラムで議論させて頂ければと思う。

※寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です。また、2024年4月23日時点の分析です

【著者の関連記事】
【米CPIと1ドル153円台の読み方】米国のインフレ率は「でこぼこ道」にいるのか、「再燃の入口」にいるのか
【第1四半期レビュー】主要通貨の中で一人負けだった日本円、勝てる通貨はトルコリラとアルゼンチンペソという現状
1ドル152円台が目前の円相場、円安が進む為替市場で日本円を買っている意外なプレーヤー
【円安トレンドに変化なし】「貯蓄から投資」で海外に流出する個人金融資産、最新の資金循環統計で浮き彫りに
金融引き締めに転換したのに円安高進、金利上昇を防ぐ代わりに円相場の下落を甘受した日銀の判断
マイナス金利解除後の連続利上げはあるのか?日銀が注視する「2024春闘」の読み方
名目GDP600兆円が視野に入る日本の「名実格差」、インフレに負ける実質成長、株高に透ける中進国転落の可能性
【日経平均・最高値更新の読み方】株高も円安も、不動産や高級時計の値上がりも、すべてインフレによる必然の帰結
円安を調整するのはインフレ経済か?人手不足と賃金上昇はもはや既定路線の日本経済
内需総崩れの様相!3期連続のマイナス成長が視野に入った日本経済と金融市場で起きそうなこと
今の日本は「仮面黒字国」、戻らぬ円とデジタル農奴がもたらす終わりなき円安
新NISAに伴う家計の円売りは根も葉もある憶測、東日本大震災後の超円高の教訓
隠れた外貨流出、金融庁も注視する外貨建て保険が持つリスク
デジタル赤字だけではない「もう一つの赤字」が食いつぶすインバウンドの黒字
今年の円高・ドル安は長期円安局面の小休止か、既に転換した「円高の歴史」
当然ではなくなった米利下げで円高の常識、「強い円」の歴史は繰り返すのか?
NISAとiDeCoで動き出す資産運用立国、「貯蓄から投資」で始まる円売り圧力
インバウンドで外貨を稼ぐ日本に悲報、デジタル赤字の増加が招くさらなる円安
※他多数。詳しくは著者ページをご覧下さい。

唐鎌大輔(からかま・だいすけ)
みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
2004年慶応義塾大学卒業後、日本貿易振興機構(JETRO)入構。日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局(ベルギー)に出向し、「EU経済見通し」の作成やユーロ導入10周年記念論文の執筆などに携わった。2008年10月から、みずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)で為替市場を中心とする経済・金融分析を担当。著書に『欧州リスク―日本化・円化・日銀化』(2014年、東洋経済新報社)、『ECB 欧州中央銀行:組織、戦略から銀行監督まで』(2017年、東洋経済新報社)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(2022年、日経BP 日本経済新聞出版)。