IMFの分析通りに分断と減速が進む世界経済

 図表①に示されるように、貿易全体で見た場合、ブロック内とブロック間では減少幅が倍以上違っており、特に戦略分野(機械や化学製品など)の貿易に限れば、ブロック内ではほとんど減少が見られないのに対し、ブロック間では大幅に減少している。

 ロシア・ウクライナ戦争に端を発する分断は世界貿易を確実に分断しており、後述するように、目下、収まることのないインフレ高進の背景としても一考に値するのではないかと思われる。

【図表①】


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 なお、BOX欄では、特に米中の貿易関係が弱くなっていることにも言及があり、米国の輸入総額に占める中国のシェアは2017年の22%から2023年は14%へ約▲8%ポイントも減少したことが指摘されている。

 2017年が起点とされているのは当然、トランプ政権発足に合わせたものであり、今年11月に再選を果たせば、この動きがさらに加速するということも意味する。

 ちなみに、米国が有していた中国拠点は2017年から2022年に間にメキシコやベトナムなどへリバランスされており、サプライチェーンが間延びし、効率性が犠牲にされているとの指摘もある。

 こうした直接投資の引き揚げと再構築を巡る動きに関し、1年前のWEOに絡めて本コラムでは以下のように記述していた:

 そうして企業がFDI(海外直接投資)の再構築(relocation)を検討する際、直接投資を行う国(多くは先進国)に対して政治的な距離がある国(多くは新興国)はFDIの流出に見舞われやすくなる。

 結果的に、FDIが「流入する国」と「流出する国」の分断化が深まり、結果的に世界全体で見ればアウトプット(生産量)は減り、貧しくなっていくのではないかというのがIMFの問題意識である。

 実際、当時のIMFの分析と懸念通りに世界経済の分断と減速は進展しているのが現状と言わざるを得ないだろう。