効率性と比較優位の論理をベースにしたグローバリゼーションはフレンド・ショアリングに取って代わられようとしている(写真:AP/アフロ)

菅原 淳一(オウルズコンサルティンググループ・プリンシパル)

 多くの国際機関や専門家、メディアの警告にもかかわらず、2023年には世界の「地経学的分断」が進行しそうである。

 主要国はこぞって「経済・国家安全保障という名の政策介入」(クリスタリナ・ゲオルギエバIMF専務理事)を進め、「効率性と比較優位の論理が安全保障と経済的ナショナリズムの重視」(英エコノミスト誌)に取って代わられつつある。

 米国は、自由貿易と経済安全保障を両立する方策として「フレンド・ショアリング」を推し進めており、日本もこれに積極的に協力している。その一方、米国をはじめ、世界に広がる自国優先・保護主義的措置がこの動きを阻害し、同志国間の分断をも招くことが懸念されており、これを防ぐ政策調整やルール形成が望まれる。

Ⅰ.高まる「地経学的分断」への懸念

 ここ数年の国際情勢を見る上で、「分断」は重要なキーワードとなっている。

 日本経済新聞は2023年年始から「Next World 分断の先に」や「経済教室:危機と分断の時代」を連載した。1月16日から20日まで開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)のテーマも「分断された世界における協調(Cooperation in a Fragmented World)」であった。こうして見ると、残念ながら2023年も「分断」がキーワードとなる状況が続きそうだ。

 米国などを見ていると、国内の政治的・社会的「分断」も大変気になるところではあるが、ここでは「地経学的分断(geoeconomic fragmentation)」に焦点を当てたい。