イランのミサイルを迎撃するイスラエルのアイアンドーム(写真:新華社/アフロ)
イランのミサイルを迎撃するイスラエルのアイアンドーム(写真:新華社/アフロ)
  • ついにお互いの領土を直接攻撃するに至ったイスラエルとイランだが、旧約聖書にも描かれている通り、歴史を振り返れば、両者の関係は長年良好だった。
  • かの有名な「バビロン捕囚」からユダヤ人を解き放ったのはペルシャであり、その後もペルシャ帝国でペルシャ人とユダヤ人は共存していた。
  • 米国とイランの関係が改善しない限り、イスラエルとイランの関係が改善することはないが、核合意を成立させたオバマ元大統領のケースもある。対話を重視する新しい指導者の登場が待たれる。

(山中 俊之:著述家/国際公共政策博士)

旧約聖書にも描かれるユダヤとペルシャの意外な関係

「パンドラの箱をあけてしまった」

 多くの中東ウォッチャーがそう感じているに違いない。イスラエルとイランが相互の領土を直接攻撃したことについてである。

 イスラエルによるシリアのイラン大使館への攻撃で、イラン・イスラム革命防衛隊の将軍2人を含む軍幹部らが死亡した。その攻撃に対する報復として、イランが300を超すドローンなどでイスラエルに反撃、負傷者が出た。イスラエルは、イランの古都イスファハンも攻撃したとの報道もある。

 中東の二大軍事大国であり敵対関係にあるイスラエルとイランは、お互い暗殺やサイバー攻撃などを繰り返してきた。しかし、相手国領土において直接軍事対決することは初めてのことだ。

イランによるミサイル攻撃の残骸(写真:ロイター/アフロ)

 こういった報道に接すると、イランとイスラエルは不俱戴天の敵といったように見えるかもしれない。だが、歴史的には必ずしも正しくない。本稿では、イランとイスラエルの歴史を振り返って、簡単ではない事態の打開のための何らかのヒントを探りたい。

 イスラエルに住むユダヤ人が、旧約聖書の時代からの長い歴史を持っていることはよく知られる通りである。また、イランに住むペルシャ人も、古代ギリシャとペルシャ戦争を戦うなど、紀元前からの歴史を持つ古い国家である。

 こういった古い歴史を持つ両民族が、長きにわたって戦争もしくは緊迫した関係にあったかというと、そのようなことは決していない。むしろ良好と言ってもいい時代が長かった。