5月下旬に中国内陸部の中核都市のひとつである成都を訪問した。その際に日本最大のコンビニエンスストアの現地法人を訪問し、そのビジネスモデルを牽引する日本人経営者の話を聞き、店舗を見学する機会を得た。

 そこには中国経済発展の原動力となっている内陸部で、日本のノウハウと中国人を活用した新たなイノベーションを融合させてビジネスチャンスを的確にものにする、したたかな日本企業の成功モデルがあった。

 以下ではその素晴らしいビジネスモデルを紹介したい。

成都発・日本型コンビニのイノベーション

成都の中心的繁華街、春熙路(ウィキペディアより)

 今回訪問した成都の現地法人が経営するコンビニには、現地で新たに考え出された数多くの工夫が盛り込まれた企画が満載だ。代表的なものは以下の通りである。

 第1に、お店の中に喫食コーナーが設けられている。十数人が座れる簡単なテーブルとイスが入り口付近に設置されており、そこで店内で買った弁当と飲み物を食べることができる。店内に十分なスペースがない場合には、店の入り口付近の外側にテラスのようなスペースが設けられている。

 ランチのピーク時になるとスペースが足らないため、付近のコーヒーショップのテラスでもコンビニで買った弁当を食べている客も多いとのこと。成都の現地法人では90店に迫る全店舗の8割程度がこの方式を採用している。

 第2に、日本であれば肉まん・あんまんや鶏のから揚げなどが陳列されている保温型ガラスケースはレジの隣の台の上に置かれているが、成都現地法人のコンビニではフロアから大人の背の高さくらいまでの背の高い大型保温容器が、2つから4つ並んでいる。

 それでもお昼時には需要に追い付かなくなるため、レジの奥に置いてある電子レンジをフル稼働させて、食品を温めて保温ケースに補給する。

 第3に、弁当の量が多い。成都のコンビニ弁当を手で持ってみると明らかにずっしりと重い。「どかべん」サイズである。これは1日のうちでも昼食で食べる量の方が夕食より多いのが一般的であるという成都の生活習慣に合わせたものである。もちろん女性用に日本サイズと同じ小ぶりの弁当も揃っている。