疑わしい日本の政策対応能力

 諸外国に圧力を加えながらも政策が二転三転するのは、そもそもトランプ政権の政策観が自己矛盾に満ちているためだ。その下で、ドルの為替レートは意図せざるかたちで上下する。その中で、ドルの価値は抜群の流動性という遺産に支えられつつも、着実に低下している。今のドルを取り巻く環境はこうしたところだろう。ドル不安そのものは続いているのだ。

 欧州は今回、米国を突き放すような対応である。米国が勝手に始めた戦争なのだから、その始末に関与させるなというところだろう。北大西洋条約機構(NATO)の費用負担やグリーンランドの帰属を巡り強烈な圧力をかけられただけに当然と言える。中国やインドも、米国に対しては怒り心頭に発する思いではないか。

 一方の日本である。事態が長期化した場合、エネルギー価格の高騰は回避できない。その強烈なコストを、日本は黙って負うのだろうか。特に価格の高騰が懸念される天然ガスに関しては、米国に低価格での優先的な供給を要請するくらいの政治力を、本来ならば期待したいところであるが、そうした外交を展開できるだろうか。

 それに、エネルギー価格の高騰が回避できない場合、諸外国の中銀は利上げに転じるだろう。ここで日銀が機動的に利上げできなければ、円安とのダブルパンチが直撃することになる。こうしたホラーストーリーを念頭に、今の日本が大胆かつ適切な政策を取ることができるだろうか。正直、かなり疑わしいところである。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。