なぜ社会保険でわざわざ「逆選択」を起こすのか?
このように、保険制度において、ある集団にリスクの高い人が集まり、リスクの低い人が逃げてしまうような状況を、「逆選択」とよびます。
たとえば、「誰でも入れる生命保険」があったとします(無選択型といいます)。このような保険は病気などで他の保険に入れない人が多数加入することになりますから、平均的な死亡率よりもこの保険の加入者の死亡率が高くなるため、保険料が高くなります。
逆に、健康な人はわざわざ高い保険料の保険には入りませんから、健康状態を告知して安い保険料の保険に加入するでしょう。
自由に保険を組成するとこのような「逆選択」が必ず発生することになります。「国保逃れ」も逆選択の一種といえるでしょう。
これを防ぐには、なんらかの強制力によって禁止するしかありません。つまり、法令で「加入者をより好みしてはいけない」と定めればよいのです。
民間保険ではそのような規制をすることが必ずしもよいこととはいえないのですが、「国民皆保険」の理念のもとで社会保険を運営するのであれば、リスクの偏りが発生しないような制度を作るのが本来は合理的であるはずです。
母集団が大きくなればなるほど制度はシンプルで安定的になり、「相互扶助」の精神が最大限に発揮できる状況になります。要は、「国民全員をひとつの健康保険制度に加入させる」のが最も効率がよいということです。
であれば、なぜ健康保険制度において企業が従業員を囲い込むことを容認されているのかが本来問われるべきなのではないでしょうか? わざわざ集団を細分化させるメリットがあるようには思えません。