米国のアキレス腱である国債の海外依存
国債を海外消化に依存している点は、米国にとって“アキレス腱”だ。外国の投資家、特に米債を外貨準備資産として保有する機関投資家としての各国政府の存在は、トランプ政権にとっては必ずしも歓迎できない存在である。ゆえに各国政府に対して、トランプ政権が超長期債への借り換えを一方的に迫ろうとした経緯がある。
いわゆる割引短期国債に国庫短期証券といった短期債(T-Bill)や、流動性が高い10年国債では、マーケットで売却されやすいため、金利が上昇し、米政府が資金繰りに窮する事態に陥るリスクがある。一方で超長期債であれば、マーケットが発達しておらず容易に売ることができないため、そうしたリスクは軽減されることになる。
こうした発想の下、トランプ政権の有力な経済ブレーンの一人である連邦準備制度理事会(FRB)のスティーブン・ミラン理事は、軍事力を提供する代わりに、各国政府に超長期国債の購入を強制しようという構想を立てたことで知られる。この構想自体は、当然ながら思うようには進まず、米国の“アキレス腱”は依然として残ったままだ。
言い換えれば、反発を強める欧州諸国が結託して米債を売り、マーケットを通じてトランプ政権に動揺を与えるストーリーは十分に想定される。その効果も劇的なため、いわゆるTACOに追い込むことも可能だろう。再びスコット・ベッセント財務長官が矢面に立ち、米国と欧州諸国との関係をとりあえずは取り繕うのではないか。
問題は、この対抗手段が、程度が過ぎれば確実に返り血を浴びる諸刃の剣だということだ。世界の金融取引の中核をなす米債の需給が緩めば、マーケットが必ずグローバルに不安定化する。米債の信用力を基に発行されているドルも売られ、いわゆる“ドル不安”が強まろう。行き場を失ったマネーが貴金属にいっそう集中するかもしれない。