民意と議会を無視してトランプ政権が暴走するリスクも

 米国は今年11月に中間選挙を控えている。4年の空白があるとはいえ、再選して二期目を務めているトランプ大統領に次の任期はない。通常の大統領であれば中間選挙を意識して政権を運営するが、多くの識者が指摘し始めたように、傍若無人なトランプ大統領は、有権者の支持率の低下にも臆せず自らが正しいと思う道を突き進むのかもしれない。

 となると、欧米間の関係の改善はなかなか見込みがたい。外交努力だけではどうにもならないと考えた欧州諸国が、マーケットを通じて米国に圧力をかける展開は十分に視野に入る。現にそれぐらいしか、欧州諸国が具体的に米国へ圧力をかける手段は残されていない。それは強力だが、グローバルな金融不安に拍車をかけるものになりそうだ。

 最後に、日本に目を向けると、高市早苗首相が解散総選挙に打って出たことを材料に株式の強気相場が続いている。一方で円安も進行しており、結果、ドルで測った日経平均株価は横ばい圏であり、通貨の弱さの深刻さがよく分かる。今後、グリーンランドを巡る欧米間の関係の緊張がマーケットを揺るがせば、その株高すらも一気に萎むだろう。

 今般のグリーンランドを巡る欧米間の緊張を受けてもドル円レートが円高に振れない場合、現状の為替レートは、日本の国力の低下をかなり反映していると考えるべきだろう。グローバルな不安定性に鑑みた場合、経済最優先を標榜するなら、本来なら解散総選挙をするような余裕などない。日本の政治の現状認識は甘いと言わざるを得ない。

※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です

【土田陽介(つちだ・ようすけ)】
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査部主任研究員。欧州やその周辺の諸国の政治・経済・金融分析を専門とする。2005年一橋大経卒、06年同大学経済学研究科修了の後、(株)浜銀総合研究所を経て現在に至る。著書に『ドル化とは何か』(ちくま新書)、『基軸通貨: ドルと円のゆくえを問いなおす』(筑摩選書)がある。