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世界の政治・経済秩序が大きく揺れています。トランプ大統領の再登場によって米国の通商方針は大きく転換し、世界貿易機関(WTO)をはじめとする国際ルールも機能不全に陥りつつあります。日本では高市政権が日本の自律性を高めるべく、経済安全保障の強化に動き出しました。

地政学リスクが複雑化する現在、日本企業は「中国依存」からどう脱却し、サプライチェーンをどう再構築すべきなのか。経済産業省でFTA交渉などを担当し、現在は経営戦略支援を手がけるオウルズコンサルティンググループの羽生田慶介CEOに話を聞きました。4回に分けてお届けします。

(取材日:2025年11月27日)

※JBpressのYouTube番組「JBpressナナメから聞く」でのインタビュー内容の一部を書き起こしたものです。詳細な前編は、JBpress公式YouTubeでご覧ください。

トランプ後の世界「元には戻らない」

——トランプ大統領の任期はまだありますが、その後の米国や国際社会はどうなると見ていますか。

羽生田慶介・オウルズコンサルティンググループCEO(以下、敬称略):まず、トランプ大統領ではなくなっても元のアメリカに戻らないでしょう。バイデン大統領ですら第1期トランプ政権に導入された関税を戻していませんでした。トランプ現象は、アメリカが抱える構造的な問題が生んだ結果なので、政権が変わっても本質は変わらないと思います。

 特に戻らないのはWTO(世界貿易機関)ルールのような、アメリカがこれまで世界を主導してつくってきた国際ルールの機能不全です。トランプ政権だけの問題ではなく、多くの国が従来型のルールに限界を感じ、新しい枠組みを求め始めています。

——そもそも大国が主導すべきかどうかという議論もありますね。

羽生田:ひと昔前は7カ国、多くても30カ国程度が実質的な合意をして、残る全加盟国に対して「この方向で採決してほしい」と要望しながらWTOルールを形成していきましたが、今はそれが通用しなくなってきています。皆が新しいルールづくりを求めているのです。

 ただ現時点で答えがないのが現実です。WTO的な「差別的でない」「自由貿易」のルール理念は第二次世界大戦の反省から生まれたもので、WTO的でない世界は「自国を守るために何でもやる」という考え方に近い。これが行きすぎた結果、戦争につながった歴史もあります。

 ただし、当時と違って今は経済が複雑につながり合っているため、各国がどれだけ自国優先を掲げても、完全な対立にはなりにくい面もあると思います。一方で、歴史の教訓を忘れれば本当に危険だという見方もあります。今まさに政府も学者も、一生懸命考えているところです。