ギリギリ経営からの変革が急務
——そうした中、高市政権のスタンスはどうでしょうか。
羽生田:高市政権は「日本の自律性を取り戻す」という危機感をしっかりと表に打ち出し始めた最初の政権と言えます。特定の国に依存するのは危ないと政府が明言するようになりました。
——しかし企業側は中国依存からすぐに脱却するのは難しいでしょう。
羽生田:だからこそ大事なのは、まずどこを押さえられているのかを特定することです。私は企業に「依存度合いのチェックポイントを洗い出してください」と伝えています。中国であれ、ロシアであれ、他国にどの部分をどれだけ握られているのかということです。
そのうえで必要なのが「冗長性」をつくることです。ギリギリの経営から、多少ダブついていてもいい経営へ変える必要があります。ただし、すべてダブつけばコストが上がるだけなので、他のどこかを削る必要があります。
トランプ米大統領(写真:AP/アフロ)
例えば、製品ラインナップを少し減らし、その分、サプライチェーンには余裕を持たす。重要ではない事業をやめることで、重要な部分に余力を回すといった組み合わせが必要です。
経営者にとってその判断は容易ではありませんが、2025年半ばからは明らかに企業の相談のトーンが変わりました。経済安全保障というリスクに腹をくくって向き合いはじめています。
——高市政権が「経済安全保障推進法」の改正に向けた検討を進めていますが、現状日本の経済安全保障は何が課題なのでしょうか。
羽生田:今回の改正は高市政権が急に強硬になったというより、これまで考慮すべきだった内容が抜けていたので急ぎ埋めたという面が強いです。ゲノム情報などのデータ保護強化のほか、医療を重要インフラに位置づけたり、海底ケーブルの保護に力を入れたりしています。
その中でも海底ケーブルは非常に注目されます。2025年に入ってからも海底ケーブルの損傷・破断は増え、中国と台湾の間など、意図的に壊されていると疑われるケースもあります。日本にとっても海底ケーブルの保護は最重要課題のひとつです。日本は海底ケーブル事業にも強いので、これは国家としても守る必要がある分野です。