10月4日に新総裁が誕生する(写真:アフロ)
2025年の総裁選は、小泉進次郞氏、高市早苗氏、林芳正氏の順番で優勢の模様だ。主要3候補の誰が総裁になっても、政局や政策は変わらない面もあるが、変わる面もある。相場の方向感、野党との協力、補正予算、政治日程、衆院解散時期など、総裁選後の展開を整理する。(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
<総裁選本番へ>
10月4日の土曜日に自民党総裁選の投開票を迎える。立候補者は、届け出順で小林鷹之氏(元経済安保相)、茂木敏充氏(前幹事長)、林芳正氏(官房長官)、高市早苗氏(前経済安保相)、小泉進次郎氏(農相)の5人だ。
投開票の当日、13時に国会議員による1回目の投票が始まる。2021年および2024年の総裁選と同様であれば、14時過ぎ頃に議員票と党員票の開票結果が同時に発表される。
過半数を得る候補がいない場合、上位2候補が決選投票に進出、5分ずつ演説する。その後、ただちに国会議員による投票開始となる。15時過ぎ頃には決選投票の開票結果が発表され、新総裁が選出される。
なお、1回目の投票で2位と3位が同数となる場合、そして決選投票で両者同数となる場合、ともにくじ引きにより勝者が決まる。
<昨年の総裁選と相場動向>
2024年の総裁選は、石破茂氏、高市氏、小泉氏による「三つ巴」となり、直前まで不透明な情勢であった。小泉氏は序盤には優勢だったが、討論会などを経て終盤に失速。結局、総裁選の1回目の投票では、高市氏が1位、石破氏が2位となり、決選投票に進出した。
両者とも国会議員の支持基盤が必ずしも厚くない中、1位で通過した高市氏が優勢との見方が強まったものの、蓋を開けてみれば僅差で石破氏が勝利、新総裁に選出された。
投開票は9月27日の金曜日だったため、開票結果にリアルタイムで市場は反応した。高市氏は日銀による利上げを牽制、積極財政路線を掲げていたため、1回目の投票結果判明後に高市氏が勝利するとの期待が高まった際は、イールドカーブのスティープ化、円安、株高が進行した。だが、決選投票で石破氏が勝利すると、市場は逆回転となった。
<昨年ほどの「三つ巴」ではない中での相場展開>
2025年の総裁選は、小泉氏が1番手、高市氏が2番手の位置づけで選挙戦が進んでいる。中盤以降、陣営の広報戦略を巡る問題などが取り沙汰されて小泉氏が失速、林氏が追い上げる展開だ。
ただ、自民党の党員や国会議員を対象とする各種調査に基づけば、昨年ほどの「三つ巴」と呼べるような混戦には至っていないようで、小泉氏、高市氏、林氏の順番で優勢の構図は変わらないようだ。
国会議員の支持基盤を踏まえれば、決選投票が「小泉氏vs高市氏」もしくは「小泉氏vs林氏」となる場合は小泉氏が優勢、「高市氏vs林氏」となる場合は接戦と目される。
よって、仮に高市氏が勝利すれば、市場にはサプライズとして受け止められるだろう。小泉氏や林氏はともに石破政権の継承を掲げているのに対し、高市氏は昨年と同様に日銀の利上げに慎重、かつ積極財政路線を掲げている。前年の経験を踏まえれば、週明け以降、イールドカーブのスティープ化、円安、株高が進行する。
小泉氏や林氏が勝利すれば、現政権の継承かつサプライズなしということで、週明けの市場の変動は大きくならないだろう。