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(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年8月26日付)

レアアースのサンプル。左から酸化セリウム、バストネサイト、酸化ネオジウム、炭酸ランタン、写真:ロイター/アフロ

 ドナルド・トランプが今年初め、ウォロディミル・ゼレンスキーに向かって「あなたはカードを持っていない」と言ったのは有名な話だ。

 米国、ウクライナ両国の大統領は最近、以前よりはうまく付き合っている。だが、国際関係に対するトランプの容赦なく現実主義的なアプローチは変わらない。

 すべてが力比べだ。では、一番強い手札を持っているのは誰か。

貿易ポーカーの切り札

 トランプ政権は今、中国との貿易ポーカーのゲームでは、エースを隠し持っているのが中国だということに気づいたようだ。

 米国は今月、中国との貿易戦争での90日間の「停戦」をさらに3カ月間延長した。その結果、中国には今やスイスやインドよりも有利な関税率が適用されている。

 中国の切り札は、西側の産業と米国の軍隊にとって不可欠な中間投入財を提供するレアアース(希土類)、その他の重要鉱物の生産でほぼ独占体制を確立していることだ。

 レアアースの名称は今もエキゾチックで、欧米人の耳には馴染みがない。

 トム・レーラーがまだ生きていたとしたら、かつて化学の元素でやったように、レアアースの名前を音楽に乗せることで世間の理解を促すことができただろう。

 だが、全面的な貿易戦争においては、西側の一般市民も近々、ネオジムやジスプロシウムといった名前をよく知るようになるかもしれない。

 中国が本気で切り札を使い始めたのは、トランプが世界の大半の国に対する懲罰的な高関税を発表し、中国が特に大きな打撃を受けた4月2日の「解放記念日」の直後のことだ。

 2日後、中国商務省は7種類のレアアースに対する輸出規制を発表した。

 世界の自動車産業へのインパクトは劇的で、ものの数週間で影響が感じられた。

 米フォード・モーター最高経営責任者(CEO)のジム・ファーリーは6月初旬、磁石に使われるレアアースの不足のせいでフォードが一時的に「工場を閉鎖」することを余儀なくされたと認めた。

 欧州メーカーも似たような問題に見舞われた。