フロリダ州にあるディズニー・ストアの前を歩く観光客(8月5日、写真:AP/アフロ)
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 米エンターテインメント大手のウォルト・ディズニー・カンパニー(ディズニー)とNBCユニバーサルが、画像生成AI企業ミッドジャーニー(Midjourney)の著作権侵害をカリフォルニア州ロサンゼルスの裁判所に提訴したとの報道がありました。

 訴状によるとミッドジャーニーは、以下のキャラクターなどを無断盗用して画像生成ビジネスを展開、昨年だけで3億ドル(約440億円)の収益を上げ、著作権を侵害したまま営業を拡大しようとしているとして、告発されています。

「スパイダーマン」
(『スター・ウォーズ』の)「ヨーダ」
「インクレディブル・ハルク」
「アイアンマン」

 米ハリウッド大手が、こうした生成AIによる著作権侵害で訴訟に踏み切るのは初めてとのこと。

 しかし、こうした傾向には一定の背景を指摘できます。

 2024年1月1日元旦をもって、ディズニーの看板キャラクター「ミッキーマウス」の初代、手足の長いバージョンの著作権が切れました。

 ご存知の方はご存知かと思います。米国の著作権法は著作権保護期間を作品発行から最大95年間としています。

「初代ミッキーマウス」はディズニー初期の音声動画アニメーション短編「蒸気船ウィリー」(1928)でデビュー、作品そのものの著作権が2023年末に切れたわけです。

 改めて、97年前の「蒸気船ウィリー」を見直してみると才気煥発、昨今のアニメが気の抜けたサイダーのように感ぜられます。

続々と切れるキャラクター著作権

 ウォルト・ディズニー(1901-66)兄弟の「ディズニー・ブラザーズ・カトゥーン・カンパニー」が創設されたのは1923年ですから、「アニメ」は約100年の歴史を数えていることになる。

 これに伴って様々な有名キャラクターの著作権が切れ、今後はパブリックドメインに入れられてAIに学習され放題となることが見えています。有名どころを挙げれば次のようなキャラクターです。

2025年 ポパイ
2030年 ドナルドダック
2034年 スーパーマン
2035年 バットマン

 アニメの古典キャラやアメリカン・ヒーローたちが、続々と“定年”を迎えます。

 こうした古典のアメリカン・カトゥーンを見直すと、表現そのものを模索していた時代ですので、実に鮮やか、正味で素晴らしいと思います。

 ちなみに私は飛行機移動中、大半はPCで仕事していますが、短時間での気分転換用に「トム&ジェリー」など昔のアメリカン・カトゥーンを見ることが多いのです。

 こうしたものは正味でクリエーターのあふれる創造性を感じます。

 さて、これに対して今回の「ミッドジャーニー訴訟」、こちらはアニメーションの創造性などとはほぼ完全に無関係。

 既得権益で回っていたビジネスを、著作権継承者が失いかけ、手当をしようという裁判でしかありません。

 企業としては、「著作権切れ」に対して徒手してはいられません。ほかならぬディズニーの「ミッキー対策」としては、

◎手足の長い初代ミッキー以外の「現代版ミッキー」の著作権は有効と主張すると共に、

◎著作権ではなく商標権ビジネスで利益を確保する方針をとっているようです。

 しかし、一人の職業音楽人として、現行の著作権ビジネスは、本来の趣旨と大きく外れているとしか言いようがありません。

 こうした傾向をアニメーションで大変に強調しておられたのが、生前の高畑勲さんでした。