レッドブル所属の日本人ドライバー、角田裕毅(写真:ロイター/アフロ)

映画『F1/エフワン』のヒットが「新しいF1ファンを増やす」

目次

 映画『F1/エフワン』が世界中でヒットしている。全世界興行収入は5億4000万ドル(約790億円)を突破し、主演のブラッド・ピットにとっても、主演作として過去最高のヒット作となった。

 この映画は現役のスタードライバー、ルイス・ハミルトンがプロデューサーを務めるなど、F1の全面協力によって作られている。

 去る6月にニューヨークのタイムズスクエアで行われたワールドプレミアには、製作陣に加えてF1ドライバーも登場。その中には日本の角田裕毅もいて、「新しいF1ファンを増やしてくれるんじゃないかなと思います」「僕がブラッドに抜かれるシーンが多いので、そこもぜひ楽しんでください(笑)」とアピールした。

ニューヨークのタイムズスクエアで行われた映画『F1』のワールドプレミアに出席した主演のブラッド・ピット(2025年6月16日、写真:AP/アフロ)

 実際にF1人気は世界中で高まっている。当サイトでもお伝えしてきたように、日本でも高まっているが、日本での人気のけん引役が角田裕毅であることは間違いないだろう。

 日本人最年少で自動車レースの最高峰・F1にたどり着いた角田は今年、シーズン途中の4月に、トップチーム・レッドブルへの電撃移籍が決まり、ファンのボルテージは最高潮に達した。しかし──。

 今、角田は苦境にある。だが、苦境だからこそ、ますます目が離せなくなっている。角田をいっそう応援したくなると同時に、角田をめぐる状況が、速く走るというシンプルなスポーツが持つ、複雑さや奥深さを、あるいは理不尽さを教えてくれるからだ。

 これはもちろん、テクノロジーとスポーツの掛け合わせであるF1競技の本来の特性であるが、角田に注目することで、筆者にはいっそう際立って見えてきた。シーズン後半からF1を楽しむ方に向けて、これまでの角田選手の状況をおさらいしつつ、見どころを解説したい。

2025年7月25日、F1ベルギーグランプリ第1回フリー走行中の角田裕毅(写真:Jay Hirano/アフロ)