NVIDIAのフアンCEO(7月23日、写真:ロイター/アフロ)
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 7月中旬、米国の対中半導体戦略の転換点となり得る2つの動きが相次いだ。

 一つは、米政権が米エヌビディア(NVIDIA)製のAIチップ「H20」の対中輸出禁止を事実上撤回したこと。

 そしてもう一つは、その直後にエヌビディアのジェンスン・フアンCEO(最高経営責任者)が北京で語った、「H20よりもさらに高性能なチップを中国に届けたい」という野心的な発言である。

 一連の動きから約3週間が経過した。

 当初、この決定はエヌビディアの窮状を救うための例外的な措置と見られていた。だが、現在では米中技術覇権の行方を占う、より長期的で計算された米国の戦略転換との見方が強まっている。

規制緩和の先に見据える「未来の輸出」

 フアンCEOは北京での記者会見で、H20の販売再開にとどまらない意欲を明確にした。

「テクノロジーは常に進化する。我々が中国で販売を許可される製品も、時とともに性能が向上し続けるのが理にかなっている」

 これは、現行の輸出規制準拠モデルの販売再開に安住するのではなく、将来登場するであろう、より高性能な次世代チップの対中輸出をも視野に入れていることを示唆している。

 この発言の前提には、米政府による劇的な方針転換がある。

 今年4月以降、米商務省はH20を事実上の禁輸対象とし、エヌビディアに45億ドル(約6700億円)もの在庫評価損をもたらした。

 しかし7月、フアンCEOがトランプ米大統領と直接会談した直後、この規制は覆された。

エヌビディアの再起、米国の新たな対中戦略

 フアンCEOの狙いは明確だ。

 一連の規制により、かつて95%を占めていた中国AIチップ市場でのシェアは半減し、華為技術(ファーウェイ)など中国勢の猛追を許していた。

 同氏にとって、推定500億ドル(約7兆4000億円)規模に成長する中国AI市場への復帰は、企業の成長に不可欠な最重要課題だった。

 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、フアン氏はトランプ大統領に対し、「米国企業が世界のAI分野を支配するためには、中国を含むほとんどの地域に自由に技術を販売できるようにすべきだ」と説得したという。