軍の活動は国家が危急の時。軍が全力をもって任務を果たすに当たって制約事項は少ないほど望ましく、また制約されてはならない。国家・国民の安全の確保は、何にもまして国が果たすべき最大の役割であるため、あらゆる国は歴史的にも例外なく軍事分野にはできる限りの資源を最優先に投資してきた。

軍隊のエネルギー問題に火をつけた2つのきっかけ

NY原油、1バレル=120ドル台に急騰 一時130ドルも

軍隊は化石燃料から脱却できるか〔AFPBB News

 そして今、この分野に大きな制約が立ちはだかり、これを乗り越えるべく静かで大きな変革が始まっている。エネルギー問題への対処である。

 石油などの化石燃料からの脱却と一層の省エネルギーの達成を目指している動きを紹介する。

 軍においてエネルギー問題に火がついたきっかけは2つある。第1のきっかけは化石燃料の価格高騰である。

 2004年頃から始まった原油価格の高騰は、2008年になると投機の影響などを受けて1バレル=147.27ドルまで上昇した。この価格高騰は当時のイラクやアフガンにおける米軍の作戦にも支障を与え、軍関係者にショックを与えた。

 米国は既にその消費量の50%以上を輸入に頼っており、産油国や市場の状況に軍の作戦までが左右されかねない状態に陥っていることを実感したのである。しかも産油国の中には政情が不安定であったり専制的な国が含まれており、安定した供給確保の道は遠い。

中国、インドの成長で化石燃料は一層逼迫へ

 また、化石燃料を保有するエネルギー資源国の中には、ロシアやベネズエラのように、この国力を外交の切り札として活用する動きもある。

 2009年のロシアによるウクライナなどへの天然ガス供給停止は、これによって影響を受け、さらには同じような状況に陥りかねないヨーロッパの国々を震撼させた。

 さらに中国やインドなど、最近経済発展が目覚ましい国々の経済活動が活発化するに従って、化石燃料の一層の逼迫が予測される。中国はエネルギー資源を求めてアフリカ、中央アジアでエネルギー外交を活発に展開している。

 今後も引き続きエネルギーを巡る争いが世界の安全保障に大きなインパクトを与えるだけでなく、エネルギー問題が軍の活動に直接制約を加えることが予期される。