日米関税交渉について「相互関税」を15%とすることで合意したと発表した石破首相=23日午前、首相官邸(写真:共同通信社)
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(市ノ瀬 雅人:政治ジャーナリスト)

駆け巡った石破首相の進退論

 23日、参院選での敗北に伴い、石破茂首相(自民党総裁)が退陣の意向を固めたとの一部報道が駆け巡った。

 だが、石破氏はその後、麻生太郎、菅義偉、岸田文雄の各首相経験者と党本部でそろって会談。会談を終え、記者団に「報道されているような事実は全くない」と否定し、首相を続投する意向を示した。

石破首相、岸田前首相らとの会談に向かう、自民党の麻生最高顧問=23日午後、東京・永田町の党本部(写真:共同通信社)

 参院選は、勝敗ラインとした自民、公明両党による参院過半数(125議席)確保に必要な当選計50人に3人届かず、47議席にとどまった。このため、党内から「敗北だ」と、責任を問う声が出ていた。

 一部では、春以降の懸案だった日米関税交渉で、税率引き下げの道筋がついたことを踏まえ、既に決まっている外交など主要政治日程を終えた段階で、進退に目処をつけるとする観測まで出ている。

 これに対し、日米交渉の結果、自動車・部品の関税は既存税率を含めて15%になったことを予想以上の結果だと評価する声があり、石破首相の続投を支持する意見も出ている。

 このような目まぐるしい進退論の浮上に先立ち、参院選投開票日の翌21日には、続投への意欲を明らかにしていた。「大敗」と受け止められた参院選の直後である。自ら地位にとどまろうとした背景には、どんな論理があったのか。