いつの間にか消えていたギャンブル依存
Eさんは体のためにまた職場を変えた。
現在は地域の総合病院で、看護師の手伝いをする看護助手として働く。週5日、朝8時半から夕方17時半までの8時間労働。時給は1200円、月の手取りは15万円程度。
ここでも相変わらずEさんを悩ませるのは独特の女性社会。同僚の看護師や看護助手は、Eさん以外はすべて女性だ。
「女性社会特有の陰口、ひがみ、ねたみ、そねみ。看護師には派閥があり、それぞれから違う指示が飛んでくるのがストレスです」
女性社会で男性は外様だ。従うしかない。
体が続く限り働きたいというEさん。この5年で少しだけ貯金ができた。その額は200万円程度。実はつい数カ月前、1歳の頃に行き別れていた実の母親から、わずかな遺産が70万円だけ入った。
年金は65歳から受給するつもり。ギャンブル依存はいつの間にか治っていた。

Eさんの人生は、生き別れの母親の面影を探す旅だったのかもしれない。ギャンブルから抜け出せたのは、女性的な温もりを求め、介護の世界に入ったからではないか。
かわいいおばあちゃんと、女社会の陰湿さ。母親の、女の、表と裏を見た。高齢者の孤独を受容するのは、社会の片隅で孤独をかみしめて生きる人なのだろうか。
若月澪子(わかつき・れいこ)
NHKでキャスター、ディレクターとして勤務したのち、結婚退職。出産後に小遣い稼ぎでライターを始める。生涯、非正規労働者。ギグワーカーとしていろんなお仕事体験中。著書に『副業おじさん 傷だらけの俺たちに明日はあるか』(朝日新聞出版)がある。