Eさんを襲った女社会の洗礼
新しい仕事に就くにあたり、Eさんには期待もあった。
「介護職は奉仕の精神があって、優しい人が多いだろうから、そういう職場に行くのは悪くないとも思いました」
だが、認知症高齢者が専門の介護施設に就職したEさんの期待は、すぐに裏切られる。Eさんを一番悩ませたのは、独特の女性社会だった。
「排せつ介助はやってみるとどうってことはありませんでした。それよりも、マウントを取ろうとする職場の女性たちに耐えられなかった」
女性介護士がEさんの仕事のやり方にケチをつけてくるのは、日常茶飯事。「こんなこともできないの!」「さっさとやって!」。そんなキツイ言葉の洗礼だけでなく、時には無視される。Eさんは若い女性介護士にさえ蔑まれたという。
男性のパワハラが語られることが多いが、女性社会のパワハラも陰湿だ。
日本には、「よそ者や新人」を寄せ付けない参入障壁の高い業界や仕事がいくつかあるが、高齢者介護もそういう業界体質があるのではないか。ベテラン女性が築いた城に、独自の「掟」を敷き、「彼らは何もわかっていない」と若者や男性などの「よそ者」を阻害する。
「女ボスを立てるようにしています、機嫌を損なわないように。そうしないと仕事もうまくいきません」
女性社会の男性は、可愛げを出さないと生き残れない。男性社会で女性たちがそうしているように……。