SoCの性能強化と価格上昇

 端末上で生成AI機能を実現する上で重要となるのがSoCだが、これに搭載するCPU(中央演算処理装置)、NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)、GPU(画像処理半導体)も大幅な性能強化が必要となる。加えて、現在の成熟したスマホ市場では、買い替えサイクルが長期化している。メーカー各社は先端技術を導入することで、高価格帯セグメントでの買い替えを促そうとしている。

 スマホASPの上昇は部品原価の上昇と密接に関連しているという。その主な要因がSoCである。今後、メーカー各社が4nm(ナノメートル)や3nmといった高度な技術世代(プロセスノード)の採用を増やすため、半導体製造に関連するコストが2025年から上昇すると予想される。

 このコスト増は生成AI機能を備えた、クアルコムや台湾・聯発科技(メディアテック)製半導体の価格に影響し、1桁台の価格上昇につながる可能性がある。

 クアルコムやメディアテックが提供する最新のSoCは高価であるものの、高性能でもある。特にNPUの処理によってAI機能が強化され、複雑なタスクを高効率に実行する。例えばメディアテックの「Dimensity 9400」はNPU 890(メディアテックのAI処理コア)、Cortex-X925(英アームの最新CPUコア)、Immortalis-G925(アーム最新GPUコア)を搭載しており、前世代の「Dimensity 9300+」に比べ性能がそれぞれ40%超、30%超、40%超向上した。その一方で、価格は20%上昇した。

 こうして、SoCの価格上昇がスマホコスト全体の上昇につながっているが、メモリー価格もまた大きな要因だ。メモリーチップは2023年7~9月に価格下落サイクルを終え、新たな上昇サイクルに入った。2023年7~9月から2024年4~6月にかけて、DRAMとNAND(型フラッシュメモリー)のスポット価格は平均で60%以上上昇した。生成AIブームによって、今後も高性能かつ高価なDRAMやNANDの採用が進むとカウンターポイントはみている。