ジャパンディスプレイは2025年3月期も最終赤字の見通しだ。赤字は実に11年連続。2000億円の公的資金はゾンビの延命(「生ける死者」のゾンビが生きているか死んでいるかは意見の分かれるところだ)に虚しく費やされた。

 原因は明白だ。

 赤字事業を統合しておきながら、工場閉鎖一つできなかった。生産能力が余剰であることは誰の目にも明らかだったが、3社とも「ウチの工場を潰してもらっては困る」と頑張り、決断を下す者がいなかった。

 大口顧客のアップルに振り回された部分はあるが、烏合の衆と化したジャパンディスプレイは、液晶から有機ELへのシフトもタイミングが遅れ、次々に顧客を失った。

 あれから14年。同じことが自動車産業で始まろうとしている。

スケールメリットに意義はあるか

 23日の記者会見で日産の内田誠社長はこう言った。

記者会見する日産自動車の内田誠社長(写真:共同通信社)
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「経営統合が実現した場合はグローバルの自動車メーカーの中ではトップクラスの規模感になる。新たなプレーヤーが次々と登場し、市場の勢力図を次々と塗り替えている中、スケールメリットはこれまで以上に大きな武器となる」

 ジャパンディスプレイが3社の液晶パネル事業を統合したのもスケールメリットを求めたからだ。しかし薄型テレビからスマホへ、というパラダイムシフトにおいて、液晶パネルの生産規模は何の意味も持たなかった。むしろ体が大きくなり、船頭が増えたことにより、市場の変化に追随する敏捷性を失った。

 自動運転、電気自動車(EV)へのパラダイムシフトが進む中、ガソリン車を中心にした「販売台数世界3位」の称号など、何の意味も持たない。減損処理する資産が多いだけの話だ。三菱自動車も加わった3社統合が実現するなら、それは「自動車版ジャパンディスプレイ」の誕生になる。3社で責任をなすりつけあっているうちに市場はみるみる変化し、置いてけぼりを喰らう。