こうした中、米政府は数十億米ドル(数千億円)規模の補助金を活用し、国内の半導体産業を支援している。これにより、半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)やその競合である米インテル、韓国サムスン電子などが米国に大規模投資を行うようになった。

 これに対し、鴻海は中国国内に数多くの巨大工場を持つ。その中には世界最大のiPhone工場もある。鴻海は過去1年間、インドへの投資ペースを加速させてきた。しかし、中国への依存度は依然として高く、「地産地消」への移行ペースは遅い。

劉氏「サーバーの現地生産は速いペースで進む」

 一方、サーバー及び関連製品の生産移管は比較的速いペースで進んでいるようだ。それらは米グーグルや米アマゾン・ドット・コムといった大規模クラウド企業や政府のデータセンターにとって重要インフラだからだ。

 こうした中、劉氏は「Sovereign AI(国家独自のAI)」の台頭、すなわち国家安全保障上の利益に合致する自国AI開発への関心の高まりが、サーバーの現地生産につながる、と予測している。

 「国家独自のAIに加えて、『国家独自のサーバー』という概念を提唱する。将来のサーバー生産は、それを必要とする国々で行われるようになるだろう」(同)とし、AIサーバーはスマホよりも速いペースで移行が進むとの考えを示した。

 前述した通り、鴻海は電子機器の受託生産サービス企業である。しかし、最近は、電気自動車(EV)の受託生産へと、スマホやサーバー以外の分野にも進出している。現時点では、顧客獲得に苦戦しているようだが、将来は自動車もスマホや半導体のように外部企業が製造するようになるとみている。

 今回の技術発表会で、世界的なEV市場での競争激化と需要減速について尋ねられた劉氏は「私たちは正しい方向に進んでおり、今後もEV事業に懸命に努力し続ける」と述べた。「自動車メーカーは、もはやクルマを全て自社で作る必要はない」とも語った。