2022年8月、南シナ海のアユンギン礁付近で、覆いが外された中国海警局の艦船の艦砲(フィリピン沿岸警備隊提供・共同)

座礁船に常駐する海兵隊員の生命を左右する補給の有無

 8月16日付記事<南シナ海でフィリピンと中国の対立激化、米国も武力行使をチラつかせる事態に>でお伝えした、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)で起こったフィリピンと中国との対立が、「フィリピンの勝利」と言っていい形で終結した。

 南シナ海・南沙諸島のアユンギン礁には、フィリピンが意図的に座礁させた海軍軍艦「シエラ・マドレ号」がある。フィリピンはこの船に海兵隊員を常駐させ、実効支配の拠点としているのだが、当然ながら船へは定期的な補給が必要となる。

南シナ海・アユンギン礁で、フィリピン軍が拠点とする座礁船。写真からも老朽化が進んでいるのが分かる(写真:共同通信社)

 ところが8月5日、フィリピン沿岸警備隊(PCG)による食料や物資の補給任務が、中国海警局の船による放水で妨害されるという事態が起こっていたのだ。中国は南シナ海の大半における自国の権利を一方的に主張しており、これが周辺諸国との対立を生んでいる。今回もその主張に基づき、フィリピンの補給活動を妨害したのだろう。

 だがフィリピン側の補給活動がストップしてしまえば、シエラ・マドレ号の海兵隊員たちの生命が危険な状態になる。どのようにして補給活動を実施するかが、フィリピン国内では大きな問題となっていた。

 そして、懸案だったPCGによる補給任務が、8月22日、中国側の妨害を撥ねつけ、無事に成功した。

 PCGの巡視船「カブラ」と「シンダガン」の2隻は、補給物資を積載した補給船「ウナイザ1」、「ウナイザ2」に随伴してアユンギン礁のシエラ・マドレ号への補給任務を22日に開始。同日午前9時過ぎに無事、食料などを海兵隊員に届けることができたという。

【参考記事】
南シナ海でフィリピンと中国の対立激化、米国も武力行使をチラつかせる事態に
勘違いと願望から「創造された」中国・南シナ海領有権の根拠