バンコクモーターショーに出展した中国のEVメーカー、BYDのブース(資料写真、2023年3月21日、写真:REX/アフロ)

(藤谷 昌敏:日本戦略研究フォーラム政策提言委員・金沢工業大学客員教授・元公安調査庁金沢公安調査事務所長)

 これからの未来世界を展望すれば、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、電気自動車の普及に伴う蓄電池、モーターなどの大量生産の必要性が予想され、銅、レアアース(希土類)、リチウム、ニッケル、コバルト、グラファイト、マンガンなどの需要拡大が見込まれている。

 問題なのは、重要鉱物の加工プロセスと製造技術のほとんどが中国に集中しており、世界のリチウムの約60%、その他の重要鉱物の約80%を精製し、電気自動車用蓄電池の約80%以上の生産を独占していることだ。

 さらに中国政府は、レアアースを使った高性能磁石などの製造技術の輸出を禁止する処置を検討しているとされ、米国の対中締め付けに対抗する。

 中国は、半導体規制をはじめとする米国、日本、欧州諸国による圧力の中、重要産業のサプライチェーンを自国内で完結させる政策を進めており、今後、レアアースのような世界シェアが圧倒的に高い分野を武器として、米国やその同盟国に圧力をかけていくものと思われる。中国が製造技術を禁輸すれば、磁石メーカーを持たない米欧は新規参入が困難となり、中国に完全に依存を強いられる状況となる。中国は設備投資を進めて大規模生産による低コストでの磁石製造を進めており、今後、さらに市場を席巻する可能性がある。