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(文:白戸圭一)

立命館大学国際関係学部の白戸圭一教授が「ジャーナリズムの実践」をテーマに開いているゼミの学生たちが、「パパ活」の実態を取材した。2人の子を持つ50代のある「パパ」は「刺激的な疑似恋愛を求めて」若い女性とデートし、パパ活をしているある女子大生は「1回3~4万」で肉体関係を持ち「生活費の足しにしている」と話す。浮かび上がるのは、男性中心主義や貧困といった様々な社会問題だ。

 若い女性が裕福な男性とデートして、報酬として金銭を受け取る「パパ活」。性的関係を持つことが必須ではない点が「売春」や「援助交際」とは異なるとも言われるが、セックスに応じる女性もいるという。いまや男性国会議員の「パパ活」疑惑が週刊誌で報道される時代。筆者が勤務する立命館大学国際関係学部(京都市)のキャンパスでも「○○がパパ活している」といったヒソヒソ話が交わされている。

 では、一体、どのような女性がパパ活し、どのような男性が「パパ」になるのか──。そんな疑問を抱いた私のゼミの学生たちがパパ活の実態を取材してみた。そこから何が浮かび上がったのだろうか。

「ジャーナリズムの実践」ゼミで学生が選んだテーマは

 立命館大学国際関係学部では毎年11月に、各ゼミが学習成果を発表する「オープンゼミナール大会」が開かれる。

 私のゼミは「ジャーナリズムの実践」をテーマに活動している。ゼミの目的は、メディアやジャーナリズムを研究対象にするのではなく、学生が自ら取材テーマを決め、人々への取材を通じて様々な社会問題の背景を理解し、社会の複雑さや人間の奥深さを体感することにある。指導教員の私は適宜助言を与えるが、テーマ選択にも取材にも一切関与しない。過去には、大学生の間で密かに広がっている怪しい携帯電話販売ビジネスの実態や、ミスキャンパスの内幕などについて取材し、大会の場で活字や映像で取材成果を発信してきた。

「我々のチームはパパ活の実態を取材し、ゼミナール大会で発表しようと思います」。ゼミナール大会を5カ月後に控えた2022年6月15日のことだった。ゼミの3回生7人でつくる取材チームから取材テーマの決定について報告があった。

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