関係会社からの借り入れ金、約106億円をカジノで失い、特別背任罪で懲役4年の実刑判決を受けた井川意高氏(元大王製紙会長)。著書『熔ける 再び そして会社も失った』(幻冬舎)で、刑務所での日々や、井川氏の逮捕に伴い大王製紙で起こった「クーデター」の内幕を初めて綴った。本書に登場する人物の中でひときわ強烈な存在感を放つのが、意高氏の父親である井川高雄氏(元大王製紙社長・会長)だ。ギャンブルから足を洗った現在の心境と、「暴君」だった父親への思いを語ってもらった。(鶴岡 弘之:JBpress編集長)
「地獄の淵」から生還する快感
──『熔ける 再び』で、刑期満了後に再びカジノに足を運んだことを書かれていますが、1カ月ぶっ続けでバカラをやってギャンブル熱が冷めたそうですね。今はもうカジノに行きたいという気持ちはないのですか。
井川 行きたいとは、あまり思わないですね。誘われてちょっと遊ぶぐらいならやるかもしれませんが。
──井川さんの中でどのような変化があったのでしょうか。
井川 よく言われるんですけど、ギャンブルって一種の臨死体験なんです。ギャンブラーは、ぎりぎりの地獄の淵から生還したときの痺れる感覚の中毒になってしまうんですよ。大負けして後がない絶望的な状態から、なんとか元手ぐらいに戻すことができたとしたら、ものすごい快感なんです。それはやっぱり臨死体験だって、ギャンブルでほとんど身の破滅までいった人はみんな言いますよね。
──単に「勝って嬉しい」ではないんですね。