(英フィナンシャル・タイムズ紙 2022年7月28日付)

米中首脳会談を電話でしたものの・・・(7月28日に習近平氏と電話会談するジョー・バイデン大統領、写真:ロイター/アフロ)

 2両の列車が同じレールの上を疾走し、このままでは正面衝突するという時には、ポイントが切り換えられて片方の列車が別のレールに移される。

 悲しいかな、地政学の世界では、回避行動を取るかどうかは運転士にかかっている。

 米国と中国のケースでは、それぞれが相手の列車運転の能力を疑っている。

 過去の歴史を踏まえれば、迫りくる列車衝突事故が自ずと解決されることはほとんど期待できない。

怒鳴り合いでもエスカレートよりまし

 米国のジョー・バイデン大統領と中国の習近平国家主席――対面で会談する必要性が最も高いが、バイデン氏の大統領就任以降、一度も会っていない世界の指導者2人――については、その回避行動が取られていないことが目を引く。

 台湾問題については特にそうだ。

 バイデン氏は、米中の戦略対話のようなものを再開してはどうかと提案している。定期的な意見交換は、それこそ怒鳴り合いであっても、今日の対立のエスカレートよりはましだ。

 だが、中国は関心を示していない。

 中国側にしてみると、まずは米国が中国の内政問題、特に香港や新疆ウイグル自治区について、中国の駐米大使が「偽情報、誤報、嘘」と呼ぶものを止めなければならない。