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2022年2月4日、内閣委員会で回答する野田聖子内閣府特命担当大臣(地方創生 少子化対策 男女共同参画)(写真:つのだよしお/アフロ)

(文:小黒一正)

少子化の加速が止まらない。2000年には約119万人だった出生数が、2020年には約84万人まで低下、22年度中の80万人割れが確実視されている。これ以上の少子化を許せば、もはや対策を打っても効果がないという危機的状況に陥る可能性もある。「問題先送り」が許されない中、「異次元の給付による子育て支援」を真剣に検討すべき段階に来ている。

「出生数80万人割れ」が目前に迫る

 新潮社フォーサイトで、『「子ども4人目以降1000万円」の「異次元子育て支援」試案:ゲゼル通貨という選択肢』というコラムを執筆した(5月19日掲載)。なぜ、筆者がこのような政策提言をしたかといえば、数年前の予測を遥かに超えるスピードで少子化が加速していることに、強い危機感を持っているからだ。

 1人の女性が生涯に産む平均的な子どもの数を「合計特殊出生率」というが、厚労省が6月上旬に公表した2021年における合計特殊出生率は1.30であった。6年連続の低下であり、これ以上少子化を放置すれば、取り返しがつかなくなるだろう。

 読者の中には、現在、出生数80万人割れが、政府予測より10年近く前倒しになりそうな状況にあるということを、既にご存じの方も多いだろう。厚労省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」によると、2000年に約119万人であった出生数は、2020年に約84万人まで減少し、80万人割れが目前に迫っている。約20年間で35万人減、年間平均で約1.7万人の減少である。

 出生数が毎年このペースで減少していけば、単純計算で、20年後(2040年頃)の出生数は50万人(=84万人-35万人)を下回る。その20年後(2060年頃)の出生数は15万人(=84万人-35万人×2)を割るかもしれない。これは大雑把な試算で、やや乱暴である。もう少し精緻な方法により、筆者が独自の簡易推計を行ったところ、出生数が50万人を割るのは、現在から約30年後の2052年となった。

「出生数50万人割れ」は政府予測より20年早い

 2040年頃の出生数50万人割れを回避できたからといって、安心してはいけない。そもそも、政府予測では、出生数が50万人を割るのは2072年と予測している。もし筆者の独自推計が正しく、出生数50万人を割るのが2052年となるなら、それは少子化のペースが政府予測より20年も前倒しとなる可能性がある、ということを意味するからだ。

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