暴落したビットコインなどの暗号通貨(写真:ロイター/アフロ)

 4月以降、ビットコインを中心に暗号資産(仮想通貨)の相場は軟調に推移していたが、5月5日早朝、米ダウ平均の先物が売られたのをきっかけに、暗号資産全般が一段安となった。

 似たようなタイミングでUST(ステーブルコイン<注1>の一種)が値を下げ、5月7日にはUSTに対して14億ドルの巨額な売りが出たことで、USTの価値は大暴落を始めた。これにつられて、ビットコインなど他の暗号資産もさらなる下落となった。

注1:ステーブルコインとは、法定通貨と1対1で取引をする暗号資産のこと。例えば、ステーブルコイン「USDC」を発行する米サークルはドル・ステーブルコイン発行額と同額のドル(法定通貨)を担保として提供することで、この「1対1」を維持している 。

 現在では、ビットコインは8週連続の陰線(週初より週末の価格が低い)を続けており、本稿執筆時点(5月26日時点)でも、2万9000ドルをはさんだ動きを続けている。日々の終値ベースでは、昨年11月8日の既往最高値(6万7582ドル)の半値以下であり、直近高値だった3月29日の4万7454ドルを39%下回る。

 同様に、5月22日の暗号資産全体の時価総額(コインマーケット調べ)は、1.22兆ドルと既往最高だった昨年11月12日の2.83兆ドルの半値以下、直近高値だった今年4月3日の2.12兆ドルを42%下回っている。

 ビットコインも他の暗号資産もともに低迷して2カ月たった。先行きの見方については否定的なものが多く、下値の目途として、ビットコインは現在の3分の1である1万ドルを予想する向きもあるほどだ。低迷期間については、半年から長ければ2年と長期にわたるとの見方が一般的である。

 米国のアルゴリズム型ステーブルコインだったUSTが担保となるテラ・コインとともにほぼゼロまで価値が暴落したことは、将来のデジタルドル発行に向けた予想に影響を与えている。イエレン米財務長官がステーブルコインの規制について言及したのに加えて、共和党議員もステーブルコイン規制法案を提出した。

 自民党の一部議員が中心となって盛り上げてきた暗号資産に対する日本政府・国会議員の取り組み姿勢については、暗号資産関連税制の見直し要求の他、ガバナンス・トークン(注2)に対する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資を検討するとの意見も出ていたが、相場の暴落と、その背景にある暗号資産の信頼性の問題を考えれば、恐らく今後の対応を考え直す時期が来ているように思う。

注2:暗号資産であるトークンは、発行者が自分でトークンをどうするかを決めるユーティリティ・トークンと、トークン保有者が投票権を持つものをガバナンス・トークンがある(株式と似ているところがある)。