カリマンタン島(ボルネオ島)とスマトラ島だけに生息するオラウータン。現在、生息数が急激に減少している

 インドネシア国会は2022年1月18日、首都をジャカルタから約1200キロ離れたカリマンタン島(マレーシア名:ボルネオ島)東カリマンタン州の森林地帯に移転するための法案「首都移転法案」を可決し、同時に新首都名を「ヌサンタラ(群島)」とすることを承認した。関連法案などの審議が残るものの、この可決で首都移転が本格的に動き出すことになった。

 ジョコ・ウィドド大統領が2019年に提唱して進められてきた首都移転は国際的にも注目を集め、日本や中国なども関心を示して資金援助の意向を示しているが、特に中国は独自の経済圏である「一帯一路」構想の一環としてASEANの大国の首都移転に強い関心を寄せている。

「世界で最も早く水没する首都」

 そもそも首都移転という思い切った政策をジョコ・ウィドド大統領が打ち出した背景には、ジャカルタが抱える複数の問題がある。

 まず最も深刻なのが人口集中である。人口約2億6000万人と世界第4位の人口を擁するインドネシアは、その面積が全国土の6%でしかないジャワ島に人口の約57%が集中している。特にジャカルタ市を中心とするジャカルタ首都圏には約3280万人もの人々が集中するという超過密ぶりで、これが「東南アジア最悪」と言われる交通渋滞や失業者増大の主な原因となっている。

今年1月26日に撮影された、「東南アジア最悪」とされるジャカルタの朝の通勤ラッシュの様子。道路が車とバイクで埋め尽くされている(写真:AP/アフロ)

 さらに上水道の整備が不十分であることから地下水利用が多く、そのために地盤沈下が深刻化しているのだが、加えて地球温暖化による海面上昇によって、2050年にはジャカルタの3分の1が水面下に沈むとの予想もあり、「世界で最も早く水没する首都」と言われているのだ。