日本眼科医会が2009年に発表した調査では、2007年の段階で国内に失明者、視覚情報をある程度使えるロービジョン者を合わせると推定164万人の視覚障がい者がいる。視覚障がいの定義は、視力や視野に障がいがあり、眼鏡などを使っても一定以上の視力が出ない、視野が欠けるなどによって生活に支障を来している状態を指す。その原因は生まれつきの障がいや病気、怪我、加齢によるものなど様々だ。

避けられないロービジョン者の増加

 見ることに不便を持ちながら生きていくことは、他人事ではない。残念ながら日本では今後、ロービジョン者が増加していくと考えられている。理由の1つは高齢化だ。現在、日本における65歳以上の高齢者の推計人口は3640万人、総人口に占める割合は29.1%(9月15日時点)。高齢者は視力低下や白内障の発症が多いため、人口の約3割が視覚に不便や不満を持つと考えられる。

 もう1つは子どもの近視が増加している現状だ。文部科学省の『学校保健統計調査』(2019年度)によると、裸眼視力が1.0未満の小学生の割合は34.57%、中学生で57.47%、高校生では67.64%で過去最高となった*1。この40年間で裸眼視力1.0未満の小学生は1.9倍増、0.3未満では3.5倍増となった。さらにコロナ禍で小学生以上の子どもの24.4%で視力が悪くなったという診断を受けたり、感じたりしているという*2

*1 文部科学省令和元年度 学校保健統計(確定値)Ⅱ調査結果の概要
https://www.mext.go.jp/content/20200319-mxt_chousa01-20200319155353_1-3.pdf

*2 ロート製薬「コロナ禍における子どもの目の調査」より
https://www.rohto.co.jp/news/release/2020/1009_01/

 子どもの近視が増える原因の一つは「近業」と呼ばれる30センチ以内の近い距離でものを見る時間の増加だと言われる。デジタルネイティブである彼らは、スマホやタブレット、ゲーム機等で近距離の視覚情報と接する時間が長く、教育デジタル化の加速がさらに近業の時間を増やしている。近視が進行すると「強度近視」「病的近視」になる可能性もあり、最悪の場合は失明に至る。子どもの近視が増え続けているということは、将来的にロービジョン者が増加すると考えられるのだ。