金正恩総書記と金与正副部長のツーショット(写真:代表撮影/Pyeongyang Press Corps/Lee Jae-Won/アフロ)

(金 興光:NK知識人連帯代表、脱北者)

 ここ最近、平壌市内がざわついている。地下鉄の平野駅や市場通りなど市中の人が多く集まる場所で、人々はざわざわと騒ぎ、いったいどうなるのかと不安に駆られているようだ。

 平壌住民がこのような状態になったのは、9月27日に、北朝鮮で多くの星が落ち、代わりに新しい星が浮かび上がるという、奇想天外な出来事があったためだ。

 何の話かというと、9月27日に行われた最高人民会議・第4期15次全員会議で、北朝鮮国家権力の最高指導機関である国務委員会(委員長は金正恩)の副委員長1人を含む、委員11人中8人が解任され、副委員長1人と委員7人が新しく任命されたというニュースが報道された一件である。

 私は北朝鮮の大学校の教授として10年以上在職した。その間、最高位級の人事が、これほど大量に総入れ替させられたことなど記憶にない。1960年の党4期15次全員会議で、金日成主席が生死をかけて、要請委員長でありナンバー2であった朴金喆(パク・クムチョル)一派を粛正した際に最高位級が一新されたことはあったが、その時もこれほどではなかった。

 このような異例の権力構造における変化は、権力の核心層で、何か大きな事変があったということにほかならない。その事変とは何だろうか。新しく国務委員会に押し入った輩が権力闘争で勝利し、それによって敗北者を既存権力から一掃するような革命が起きたのだと、そんな噂や憶測が巷を賑わせている。

 北朝鮮住民が、今回の国務委員会の電撃的な交代劇に対して敏感に反応するのは、それなりの理由がある。それは、国家権力の核心が、国務委員会に集中しているためだ。国務委員会は北朝鮮の最高統治機関であり、政府の権限に属する重要政策を審議する最高政策審議機関、すなわち国家管理機関である。

 正式に任期5年の第1期国務委員会が設置されたのは、2016(主体105年)6月のことだ。その後、2019年4月11日に最高人民会議4期1次会議は、第2期国務委員会の委員を選出したが、2020年4月12日、最高人民会議14期2次会議で、国務委員のうちの少なくない人員が一次的に入れ替えられた。

 そして、9月27日の今回、任期がまだ2年ほど残っていたにもかかわらず、既存委員8人を全員解任し、新しく7人を任命したのだ。今までにこのような大量の最高位幹部が総入れ替えさせられたことはなく、初めて体験した北朝鮮住民も、あまりのことに動揺を隠せないでいる。

 それでは、どの星が落ちて、どの星が新しく浮かび上がったのか見てみよう。