岸田新政権が打ち出した「新しい日本型資本主義」に対して、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が「新社会主義にしか聞こえない」と公然と批判した。岸田政権は所得の再分配を重視する姿勢を鮮明にしており、社会主義的との感想を持った人は多い。社会主義というのは曖昧な用語で、人にとってその意味は大きく異なる。果たして、岸田政権の経済政策は「社会主義」なのだろうか。(加谷 珪一:経済評論家)
新資本主義ではなく新社会主義?
岸田氏は総裁選の段階から、「新自由主義的政策が、持てる者と持たざる者の格差と分断を生んだ」と主張し、所得の再分配を経済政策の中核に据える方針を示してきた。岸田氏は配布した政策パンフレットにおいて、「下請いじめゼロ」「住居費・教育費支援」「公的価格の抜本的見直し」「単年度主義の弊害是正」という4つの方針を提示したが、中でも目玉となるのが看護師や介護士などの年収アップを目的とした「公的価格の抜本的見直し」である。
もっとも岸田氏は「成長なくして分配なし」「分配なくして成長なし」とある種の循環論法のような説明を行っており、成長させてから果実を分配するのか、まずは強制分配を行ってから成長を促すのかハッキリしていなかった。ただ岸田氏が示した成長戦略に目新しいものがまったくなかったことや、格差の是正を強く訴えていたことなどから、世論の注目は否が応でも分配政策に向くことになった。
経団連の十倉雅和会長は岸田氏との会談後、「首相の掲げる『新たな日本型資本主義』と経団連が提唱する『サステナブルな資本主義』がいかに一致しているかを確かめ合った」と述べており、とりあえず様子見の姿勢を示す一方、新経連(新経済連盟)を率いる三木谷氏は岸田政権の政策について猛反発している。